炎症性腸疾患の新規治療薬の効果と安全性全公募
司会 | : | 金井 隆典(慶應義塾大学医学部内科学(消化器)) |
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仲瀬 裕志(札幌医科大学医学部消化器内科学講座) |
司会 | : | 金井 隆典(慶應義塾大学医学部内科学(消化器)) |
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仲瀬 裕志(札幌医科大学医学部消化器内科学講座) |
1990年代、ステロイドと5-アミノサリチル酸製剤が炎症性腸疾患(IBD)治療の中心であった。2002年抗TNF-α抗体製剤が保険適用となり、IBD治療にパラダイムシフトが生じた。現在、日本では抗TNF-α抗体製剤、抗IL-12/23p40抗体、抗α4β7integrin抗体、さらにJanus kinase阻害剤がIBD治療で使用可能となった。様々な治療法の出現により、IBDの治療概念・治療目標を含む側面が変化したのは間違いない。一方、治療選択肢が増えたことは患者の福音となったものの,医師には各治療薬の特徴を理解した至適治療法の選択と最適化が要求されている。そこで本シンポジウムでは,IBD領域における新規薬剤の治療効果・安全性を中心にご発表いただく。加えて、各施設におけるreal world dataからみた新規治療の位置づけについての考えを示していただきたい。多くの演題応募を期待する。
司会 | : | 沖 英次 (九州大学大学院消化器・総合外科) |
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中島 貴子(京都大学医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター) |
大腸癌においてもprecision medicineは始まっている。RAS遺伝子変異例には抗EGFR抗体の適応はなく、NTRK融合遺伝子陽性例では二次治療以降の最適な治療ラインでエヌトレクチニブ療法が可能となっている。MSI検査陽性例に対しては、ペムブロリズマブの投与も行われている。今後BRAF遺伝子変異、HER2遺伝子変異に対する治療も期待されている。
一方、がん遺伝子パネル検査が2019年5月に本邦でも保険承認された。現時点でのがん遺伝子パネル検査の主な使い方は、標準治療が困難となった患者に対してがんの遺伝子の特徴を調べ(がんゲノムプロファイリング検査)、現在実施中の治験などの臨床研究を検討するために用いられている。このため実際に治療薬へ到達できる確率は低いと言わざるを得ない。
本セッションでは、大腸癌におけるより効率的なprecision medicineの可能性について、それぞれの取組みについて発表いただく。
司会 | : | 栗原 浩幸(所沢肛門病院) |
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栗原 聰元(東邦大学医療センター大森病院消化器外科) |
痔瘻は肛門科医であれば誰しもが経験する一般的な肛門疾患である。しかし肛門後方の深部に原発巣を有する坐骨直腸窩痔瘻や骨盤直腸窩痔瘻に代表される複雑痔瘻は、根治させることが困難でしかも機能障害を残す可能性があり、難治性痔瘻とされる。その診断と治療には解剖学的な知識とそれ相応の経験を必要とされる。手術に際しては、それぞれの痔瘻について病態を正確に把握することが不可欠であり、その上で根治性と機能温存を求めなければならない。本シンポジウムではこの道のエキスパートに、後方の深部痔瘻の病態認識と、根治のためには何が必要か、機能温存のためには何が必要かを述べていただきたい。そして具体的な診断方法、手術手技、治療成績について最新の知見を発表していただきたい。特に手術手技についてはビデオを用いて、どこに注意して手術を行っているかを示してほしい。明日からの診療に役立つセッションになることを期待する。
司会 | : | 坂井 義治(大阪赤十字病院) |
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竹政 伊知朗 (札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科) |
大腸癌に対する根治手術は、発生学に基づく膜構造に沿った腸管剥離授動、および腫瘍局在と血管分岐に応じたリンパ節郭清が基本である。結腸癌ではCME (complete mesocolic excision)+CVL(central vascular ligation)、直腸癌ではTME (total mesorectal excision)を基本としてCRM(circumferential resection margin)、DRM(distal resection margin)を確保することで合併症低減、機能温存など短期成績の向上のみならず長期予後でも良好な成績が示された。腹腔鏡手術は拡大視野効果による微細解剖の認識向上をもたらし、さらなる成績向上が期待される一方で、その有用性についての十分なエビデンスは示されていない。本シンポジウムでは、大腸癌の外科手術におけるCME、TMEの意義とその精度の評価方法について論じていただきたい。
司会 | : | 岡島 正純(広島市立広島市民病院) |
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絹笠 祐介(東京医科歯科大学消化管外科学分野 ) |
直腸癌手術においては、縫合不全等の周術期合併症や術後肛門・泌尿生殖器機能障害、さらに局所再発といった、解決すべき課題は未だに多い。近年、直腸癌手術は数多くのアプローチが選択できる時代になってきた。標準治療である開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術やロボット手術、経肛門的アプローチと新たなアプローチを導入している施設も増えつつあり、それぞれのアプローチにおいても様々な工夫がみられる。本セションでは、直腸癌に対する手術手技を手術ビデオで提示の上、その適応や成績、並びにそれぞれのアプローチの利点、欠点を示していただきたい。
司会 | : | 岡本 康介(松島病院大腸肛門病センター) |
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鮫島 隆志(潤愛会鮫島病院) |
近年、痔核に対する手術には様々な方法が行われるようになった。特に硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)を用いた硬化療法の出現は痔核の外科治療に大きな変革をもたらし,痔核の形態により結紮切除(LE)療法、単独のALTA療法,LEとALTAの併用療法などが行われている。更に痔核より口側の直腸粘膜を縫縮して痔核を挙上させるProcedure for Prolapse and Hemorrhoids(PPH)法やAnal Cushion Lifting(ACL)法のほか、最近ではMucopexy-Recto Anal Lifting(MuRAL)法などが開発され、入院設備の有無による治療方法の選択もより合理的に可能となった。このセッションでは,嵌頓痔核を含め,主痔核、副痔核に甲乙つけがたく境界が不明瞭な痔核が全周にわたり存在する場合や、痔核に全周性の直腸粘膜脱を伴う症例など,全周性に脱出する痔核に対する手術ビデオを提示して頂き,手術手技における注意点,工夫している点,また術後加療,手術成績など,それぞれのポイントを論じていただきたい。
司会 | : | 上野 秀樹(防衛医科大学校外科学講座 ) |
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斎藤 豊 (国立がん研究センター中央病院内視鏡科) |
内視鏡治療の対象となる大腸癌はcTis癌とcT1軽度浸潤癌である(大腸癌治療ガイドライン)。cT1bの内視鏡治療適応には議論があるが、近年では、組織型を最低分化度で評価した場合、リスク因子が浸潤距離のみの病変(low-risk T1b)のリンパ節転移率は低く、1.3%との多施設報告もある。一方、最低分化度の評価法は普及しておらず、内視鏡治療後に再発をきたした症例に対するサルベージ手術の成績も悪い。本パネルディスカッションでは、low-risk T1bに対する治療選択に焦点を置く。2005年から2015年までのlow-risk T1bの治療成績(5年無再発生存率など)を中心に報告いただき、low-risk T1bの至適治療を軸に内視鏡治療の適応拡大について議論したい。EMR/ESDやTEM/MITASといった局所治療の技術的工夫や限界、偶発症対策、サーベイランス方法などの演題も広く募集する。
司会 | : | 植竹 宏之(東京医科歯科大学総合外科 ) |
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辻 晃仁 (香川大学医学部臨床腫瘍学 ) |
近年、癌免疫療法は手術,化学療法,放射線療法に次ぐ第4の治療と言われている。免疫チェックポイント阻害剤(以下ICI)であるペムブロリズマブは2018年12月21日にMSI-Highの固形癌に対する投与が保険適用となり、大腸癌にも投与可能となった。大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版においては切除不能進行再発大腸癌(mCRC)の二次治療以降の推奨治療のひとつとなっている。一方、mCRCのうちMSI-Highの腫瘍は5%弱であることなど、従来の薬物療法に比してICI療法が明らかなメリットとなる症例は限定的である。またICI療法特有な有害事象が起こりうることも知られている。薬剤費も高価である。本パネルディスカッションでは、ICIの感受性に関する基礎的検討、使用経験、有害事象のマネージメント体制、ICIと他剤との併用療法や複合免疫療法の開発、周術期治療における展望などを議論して頂きたい。
司会 | : | 馬場 秀夫(熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学 ) |
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石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科 ) |
直腸癌術前治療のstandardである化学放射線療法(CRT)は局所再発を低減するが生命予後の改善は示されていない。近年は予後改善のための全身薬物療法と局所再発低減のための放射線療法を術前に併せて行うtotal neoadjuvant therapyの有効性が欧米を中心に検証されつつある。全身薬物療法を先行させるinduction chemotherapyにおいては、永続的な有害事象の原因となりうる放射線療法を著効例に対して省略することの腫瘍学的安全性についても検証されるようになった。その一方でCRT後の著効例に対する局所切除、さらには完全寛解(CR)と思しき症例に対する非手術療法(”watch and wait)など、直腸温存療法の可能性も模索されている。
本セッションでは直腸癌に対する様々な術前治療の成績を示していただき、最適な術前治療は何かをディスカッションしたい。
司会 | : | 斉田 芳久(東邦大学医療センター大橋病院外科) |
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猪股 雅史(大分大学医学部消化器・小児外科学講座) |
閉塞性大腸癌は、下部消化管領域におけるoncologic emergency の代表であり、その治療戦略は、従来のストーマ造設を伴った緊急手術から、近年では大腸ステントを含めた経肛門的減圧を用いて緊急手術を回避するbridge to surgery が普及しており、その短期的有用性、安全性についての報告が増えている。しかし長期成績における影響は不明な点も多い。また遠隔転移を伴う閉塞性大腸癌においても閉塞解除法の選択だけでなく、術前・術後の周術期管理や化学療法の導入の有無や種類など治療方針は各施設において大きく異なる。本パネルディスカッションでは、大腸癌の根治性も考慮した上で、閉塞性大腸癌の各施設の治療戦略とその成績、合併症に対する対応などについて討議して頂き、本邦より閉塞性大腸癌における新たな治療指針の構築を深める討論を行いたい。
司会 | : | 板橋 道朗(東京女子医科大学消化器・一般外科 ) |
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遠藤 俊吾(福島県立医科大学会津医療センター ) |
直腸癌の肛門温存手術の普及とともにDiverting stomaを造設する症例が増えている。人工肛門として挙上する腸管は、造設・閉鎖が容易であることから回腸ストーマを選択する施設が多いと思われる。一方で、回腸ストーマ造設時には、High outputやOutlet obstructionといった結腸ストーマではまれであった合併症を来すことがあり、その対策が求められる。
そこで本セッションでは、High outputやOutlet obstructionを中心に一時的回腸ストーマの合併症の内容とその頻度を示していただき、さらには造設法、予防処置、治療などの合併症への対策を論じていただきたい。また、結腸ストーマとの使い分け(結腸ストーマへの変更なども含む)、回腸ストーマの予定した閉鎖時期と実際の閉鎖時期の違い、回腸ストーマ造設中のストーマ外来での指導・処置についても論じていただきたい。
合併症を発症した臨床例を検討することで、合併症を予測し、対策を講じることで予防可能なpreventable complicationとなることを期待している。
司会 | : | 岡本 欣也(東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター) |
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鉢呂 芳一(くにもと病院) |
内痔核硬化療法剤であるALTA療法が登場し、およそ15年が経過した。現在まで国内において56万件を超える症例で臨床使用されている。果たして、このALTA療法は真に「功」があったのか否か。実際にALTA療法が「功」と言える症例や治療法についての説明とともに、その根拠を提示していただきたい。一方実臨床においては、ALTA療法による副作用や合併症等で様々な苦労が発生したことと思われる。またALTA療法後の再発発生においても、様々な対応を余儀なくされていることであろう。これらを含めALTA療法の「罪」は何か。実際にALTA療法が「罪」と思われる内容や臨床例を提示していただきたい。以上、ALTA療法の「功」と「罪」について双方の立ち位置からの論評を示していただき、「功」があるならばさらにその発展を、「罪」についてはいかにそれを回避しうるか、討論の議題としたい。
司会 | : | 辻 順行 (高野病院) |
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中島 淳 (横浜市立大学肝胆膵消化器) |
大腸肛門疾患には器質的疾患と機能的疾患とがある。前者には、大腸癌、炎症性腸疾患、そして肛門疾患が挙げられ、これらの疾患の治療はこの数十年の間に目覚ましい進歩を遂げた。一方後者の疾患は、高齢社会を迎えて、ますます増加傾向にあるが、これらの疾患への取り組み(検査、治療法)は未だ確立されていない。後者の代表的な疾患としては、「排便機能障害」が挙げられる。「排便機能障害」とは様々な原因により大腸や肛門の機能に障害が生じ、主に便秘・便漏れ・排便困難・腹痛・腹部膨満等が発生する。そこで第75回大腸肛門学会における本パネルディスカッションでは便秘、便もれ、排便困難、腹痛や腹部膨満を来す大腸肛門の機能的疾患について、各演者から診断方法,治療法の選択(保存療法、手術)、治療成績について幅広く論じて頂き、日本大腸肛門学会会員にとって有益なディスカッションの場にしたいと考える。多数の演題の登録を期待したい。
司会 | : | 池内 浩基(兵庫医科大学炎症性腸疾患外科) |
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穂苅 量太(防衛医科大学校病院消化器内科) |
炎症性腸疾患の新しい治療薬は矢継ぎ早に開発され急性期の手術を回避できる症例も増えつつあるものの内科治療抵抗例も依然存在する。強力な免疫抑制療法が可能になった裏側で、内科治療を長々と行って手術に移行した場合には易感染状態で手術を迎えることになる。肺炎などの合併症併発の結果、在院死などの不幸な転帰をきたす可能性があり、内科治療の限界の見極めはますます難しくなってきていると言える。また高齢発症者の増加や、心疾患、呼吸器疾患、糖尿病などの併存症患者では見極め点を変える必要がある。今回は,内科と外科の連携をテーマに掲げ,内科治療の限界,術式、術後のQOLなどを考慮して討論いただき,内科治療で効果的である症例,外科治療が必要になる症例を予測できる内視鏡所見,病態,背景、治療に対する反応性などに関する知見を御発表いただき、内科的側面および外科的側面から討議したいと考えている。多数の演題の登録を期待します。
司会 | : | 関本 貢嗣(関西医科大学外科学講座) |
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山本 聖一郎 (東海大学医学部消化器外科 ) |
骨盤内臓器浸潤を伴う局所進行直腸癌や直腸癌骨盤内再発では骨盤内臓全摘術(TPE)が標準術式である。最近は腹腔鏡でのTPEも報告されているが、TPEは高難度手術であり、手技の習得は容易ではない。また昨今の集学的治療の進歩に伴い、周術期並びに腫瘍学的治療成績の向上が期待される。このビデオパネルディスカッションでは、各施設での標準手技をご教示いただくとともに、検討対象を明示していただき、治療方針および工夫,周術期並びに腫瘍学的治療成績をご報告いただき、演者間討論を通して一定の見解を導き出すことを目的とする。
司会 | : | 樫田 博史(近畿大学消化器内科) |
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高橋 慶一(がん・感染症センター都立駒込病院外科) |
直腸神経内分泌腫瘍 (直腸NEN: rectal neuroendocrine neoplasms) は大腸癌に比べて頻度は低いが、治療方法やその適応、さらに治療後サーベイランスに関して、確固たる基準は定まっていない。内視鏡治療においては、ESD が保険適用となったものの、キャップEMR(EMR-C) や結紮併用 EMR(EMR-L) でも遜色ない一括切除が得られ、ESDより迅速・安全かつ安価である。外科手術は、最初から選択される場合と内視鏡切除後の追加治療として行われる場合があるが、ともに適応基準は統一されておらず、リンパ節郭清を含めて術式にもバリエーションが存在する。転移・再発予測のため、切除標本に対する特殊染色をどこまで行うべきかというコンセンサスもない。転移例や、NET G3/NEC であった場合の化学療法に関しても議論の余地が残る。本セッションでは直腸 NEN に対する各種治療法の適応と工夫について、内科・外科両方の立場から多数の演題応募を期待している。
司会 | : | 貝瀬 満 (日本医科大学付属病院消化器内科学 ) |
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冨樫 一智(福島県立医科大学会津医療センター小腸大腸肛門学講座) |
大腸憩室症ガイドラインが2017年12月に本邦で初めて上梓された。以下にガイドラインで示された要点を抜粋する。憩室出血の自然止血率は70-90%。アスピリン以外の抗血栓薬は憩室出血及び再出血の危険性を高めるという一定の見解がない。憩室出血を疑った場合、初回診断法は内視鏡検査を推奨し、内視鏡検査前の造影C T検査を推奨するエビデンスはない。内視鏡的結紮法は動脈塞栓術や手術への移行率が低い。内視鏡的止血が困難な場合は、動脈塞栓術を選択し、これも不成功の場合に大腸切除術を推奨する。外科手術の止血効果は高いが、緊急大腸亜全摘術の死亡率は高い。バリウム充填法の止血効果のエビデンスは乏しく、推奨されない。NSAIDs中止による再出血予防効果はある。いずれも興味深いが、質の高いエビデンスにより裏打ちされたものでない。本ワークショップでは、各施設におけるガイドラインの実証・反証に期待し、新たな止血法やマネージメントの提案も歓迎する。
司会 | : | 小林 清典(北里大学医学部新世紀医療開発センター) |
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水島 恒和(大阪大学大学院医学系研究科炎症性腸疾患治療学寄附講座) |
クローン病の内科治療成績は、抗TNF-α抗体製剤の実用化により飛躍的に向上した。また、最近は抗IL-12/23p40抗体製剤や抗α4β7インテグリン抗体製剤の登場により、内科治療の選択肢はさらに増加している。しかし、繰り返す炎症による腸管狭窄や瘻孔形成などにより手術が必要となるクローン病患者は依然として少なくない。できるだけ手術を回避する、あるいは生物学的製剤による内科治療を強化・変更する前に手術を選択するなど様々な治療方針が選択可能であるが、長期的にどの様な方針が最適かについては未だ明確な結論は出ていない。本セッションでは消化器内科医、外科医それぞれの立場から、手術適応の判断、手術のタイミング、QOLを考慮した術式の選択、術後合併症など共有しておくべきこと、今後解決すべき課題についての議論をお願いしたい。
司会 | : | 石田 秀行(埼玉医科大学総合医療センター消化管・一般外科) |
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山口 達郎(がん・感染症センター東京都立駒込病院) |
遺伝性大腸癌の代表的疾患として家族性大腸腺種症とリンチ症候群があり,わが国の遺伝性大腸癌診療ガイドラインにも取り上げられ,診療の標準化が図られている.一方,近年の次世代シークエンス技術の進歩により,遺伝性大腸癌の新規原因遺伝子が同定されたり,がん遺伝子パネル検査の一環として遺伝性大腸癌が診断されるようになり,遺伝性大腸癌の診療を取り巻く環境が大きく変わりつつある.遺伝性大腸癌では散発性大腸癌と異なる医学的管理が求められる.すなわち,異時性大腸癌や関連腫瘍に対するサーベイランス,血縁者診断等に対する幅広い対応等が必要である.本セッションではわが国における遺伝性大腸癌の診療の現状と問題点を明らかにし,さらなる診療の向上に向けた対策について論じて頂きたい.
司会 | : | 橋口 陽二郎 (帝京大学医学部外科学講座 ) |
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加藤 健志(大阪医療センター ) |
pStageⅢ結腸癌に対する術後補助化学療法は大腸癌治療ガイドラインではフッ化ピリミジン系薬剤またはFOXFOX、CAPOXを原則6カ月行うこととしている。さらにCQでは再発リスクに応じてフッ化ピリミジン単独療法またはオキザリプラチン併用療法の選択を推奨している。また治療期間は2018年に報告された10000例以上(日本人を含む)集めた、グローバル第3相試験(IDEA試験)の結果を受けて、再発低リスクでCAPOXであれば3カ月行うことも推奨している。これらの背景となったevidenceはわが国には優越性を証明した大規模第3相試験がなく、海外のevidenceを外挿してきた経緯がある。しかし手術治療成績が欧米と比較して良好であるため、全てを外挿出来ないのが現状である。本セッションでは、pStageⅢ結腸癌に対する過去の治療成績と今後の治療方針についてリスクと治療方法について発表していただきたい。
司会 | : | 正木 忠彦(杏林大学医学部付属病院下部消化管外科) |
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味村 俊樹(自治医科大学消化器一般移植外科) |
低位前方切除術後症候群(low anterior resection syndrome、LARS)は、直腸癌に対する低位前方切除などの肛門温存手術後にみられる排便障害の総称である。その発生予測因子として吻合部の高さ、術前放射線療法、内肛門括約筋切除程度の他に、術前肛門内圧検査における機能的肛門管長・静止圧・随意収縮圧等が報告され、LARSの重症度を評価するスコアとしてLARSスコアが提唱・汎用されている。また治療法としては、薬物療法、バイオフィードバック療法、仙骨神経刺激療法、経肛門的洗腸療法等の有用性が報告されている。更には下部直腸癌に対する手術として、LARSを生じる肛門温存手術かボディイメージ変化の受容・ストーマケアが必要な直腸切断術かを選択する際に、患者と医療者が十分に話し合って決定するShared Decision Makingの重要性・必要性も、近年、再認識されている。
本ワークショップでは、LARSの診療・研究におけるこれまでの進歩・現状を確認するとともに、その認識に基づいて今後の課題を検討する。”
司会 | : | 荒木 靖三(社会医療法人社団高野会くるめ病院 ) |
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坂本 一博(順天堂大学医学部下部消化管外科) |
超高齢化社会を迎え、日常診療において骨盤臓器脱(Pelvic organ prolapse、以下POP)に遭遇する機会は増加してきている。骨盤臓器脱(POP)は狭義では「骨盤臓器が膣から脱出する病態」であり、脱出する臓器によって子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤がある。また大腸・肛門領域においては、直腸脱に注目が集まりやすいが、子宮脱や膣断端脱、膀胱瘤が高率に併発することから直腸脱をPOPの一つと捉える必要があり、最近では泌尿器科や婦人科の専門領域を超えての横断的な討論も行われている。
今回のワークショップでは、POPの診断と治療をテーマに掲げ、各施設のPOPに対する診断や超高齢者に対する治療法の選択に当たっての手術リスクの評価方法、術式の選択を含めた治療戦略とその治療成績などに関して幅広く論じていただきたい。また、各施設で問題となっている要因があれば、それを他施設との議論を通じて解決できるワークショップにしたいと考えている。
司会 | : | 中嶋 孝司(聖マリアンナ医科大学東横病院) |
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岡 志郎 (広島大学病院消化器・代謝内科) |
大腸ESDは2012年4月の保険収載後,機器の開発・改良や手技の工夫によりその技術的ハードルは徐々に低くなっている。しかし,高度線維化合併例やスコープ操作不良例など治療困難病変に対して克服すべき技術的課題がまだまだ残っている。これまで大腸ESD手技の工夫として,処置用スコープ,先端フード,より安全な高周波ナイフの開発,操作困難部位におけるバルーンオーバーチューブの活用,種々のカウンタートラクション法などが報告されている。本セッションでは,大腸ESDの標準化を目指した新たな手技の工夫や試みについて,実際の手技をビデオで御呈示頂きたい。多数の演題応募を期待する。
司会 | : | 船橋 公彦(東邦大学医療センター大森病院消化器センター外科) |
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長谷川 傑(福岡大学医学部消化器外科学) |
TaTMEは通常の腹腔鏡アプローチでは到達困難な狭骨盤・bulky tumorなどに対する有効性が期待されている術式であり、近年日本でも施行する施設が増えてきている。通常の経腹的アプローチにはない肛門側からの良好な視野は、本術式の無二の特徴であり最大の利点である。一方で単孔式手術の難しさや肛門側から見た解剖への不慣れなどから、本術式は決して容易な術式ではなく、purse-string rupture、尿道損傷、CO2塞栓などTaTMEに特有の合併症も報告されている。本セッションではTaTMEを安全に導入・施行するための解剖学的知識、トレーニング方法、症例の選択、各施設の手技上の工夫などについてビデオを用いてディスカッションを行い、本邦におけるTaTMEの安全な導入と普及に繋げることができればと考える。