第37回日本脳神経血管内治療学会 │ JSNET2021  第37回日本脳神経血管内治療学会 │ JSNET2021

会長挨拶

第37回NPO法人日本脳神経血管内治療学会学術集会
会長 東 登志夫
(福岡大学筑紫病院 脳神経外科/
福岡大学大学院 脳卒中予防・地域医療学講座)

 このたび、第37回NPO法人日本脳神経血管内治療学会学術集会(JSNET2021)を2021年11月25日(木)~27日(土)の3日間にわたり、福岡国際会議場ならびに福岡サンパレスにて開催させていただきます。本会を開催させていただくことを心より光栄に存じます。この場をお借りして、ご指導をいただいた先輩方そして全国の会員の皆様に厚く御礼申し上げます。

 脳神経疾患に対する血管内治療は、特に脳血管障害の治療において確固たる地位を築いています。脳動脈瘤コイル塞栓術や頚動脈ステント留置術が行われる様になって約20年が経過し、急性期再開通治療やフローダイバーター、あるいはロボットテクノロジー等その進歩は枚挙にいとまがありません。かつては高齢者や合併疾患をもつ患者さんに対する低侵襲な治療のalternativeという認識でしたが、現在ではその安全性と有効性から治療の第一選択となる場合も少なくありません。

 これから私達はどのような方向に向かって進んでゆくのでしょうか。脳動脈瘤に対する治療や急性期血行再建術のように、単独で完結する治療はますます増えてゆくでしょう。また他領域の発展によって治療適応が拡大すれば、コラボレーションの機会が増えるでしょう。あるいは有効な分子標的薬等の登場によって道をゆずる領域があるかもしれません。このような脳血管内治療の進歩や他分野の発展を見据えて、テクノロジー、アナトミー、ニューロサイエンス、大規模研究やエビデンス、社会的状況など様々なアプローチから、脳神経疾患およびその治療における「脳血管内治療」の現在および未来の立ち位置をあらためて確認できるようなプログラムを組みたいと思います。

 今、社会は新型コロナウイルスの感染拡大によって、想像しえなかった厳しい状況にあります。大切な人を失った方々や多くの闘病中の患者さんがいらっしゃいます。さらに多くの方々が経済的困難に直面しておられます。それでもこの困難を前向きにとらえ、テクノロジーや団結力によって「新たな世界を再構築」するための努力を惜しまない人類の姿は、私たちに大きな勇気を与えてくれます。この厳しい状況の中で考えたことは、私たちが本学会を通じて先輩から受け継いだもの、そして次の世代に伝えるべき「変わらない」ものは何かということでした。新しい治療を開拓してゆくフロンティアスピリッツ、そして先行する治療に対峙する際にはつねにサイエンスをよりどころにしてきたこと、その想いを「スピリッツとサイエンス」という学会スローガンに掲げました。もちろん学術集会の主役は、1年間の臨床や研究の成果を持ち寄っていただく会員のみなさんです。そのご発表やご討論を通じて、私たちが「受け継ぎ伝えてゆくもの」についてともに考えてみたいと思います。

 学会スローガンの「スピリッツとサイエンス」の題字は、中村信喬先生(公益社団法人日本工芸会理事、九州産業大学美術館客員教授)のご息女、中村ふくさん(大東文化大学文学部書道学科在籍)に書いていただきました。テーマにぴったりの躍動感あふれる素晴らしい書をいただきました。ポスター背景の福岡市や太宰府天満宮の絵また学会ロゴは三木浩一先生(福岡赤十字病院 脳神経外科)の作品です。

 不確実な状況ではありますが、福岡でみなさんをお迎えできる体制もとりながら、リモート発表を含めたweb併催(ハイブリッド形式)まで、安全な学会運営をめざしてフレキシブルに対応してゆきたいと思います。今日もそれぞれの施設において、コロナウイルス対策のため奔走されている会員の方も多くいらっしゃると思います。その献身的なご活動に心より敬意を表します。そしてこの困難を乗り越え、2021年の学術集会で多くのみなさんの笑顔にお目にかかれることを信じています。