第107回日本消化器病学会総会  第107回日本消化器病学会総会

会長挨拶

消化器病学のゆくへ ―第4次産業革命のさなかで―

第107回日本消化器病学会総会の会長を拝命いただき,2021年4月15日(木)から17日(土)に,新宿の京王プラザホテルで学術集会を開催することになりました。埼玉医科大学による開催は,故・藤原研司先生が2003年に第89回総会の会長を担当して以来18年ぶりになります。当時を振り返ると,消化器病学のおかれた環境は大きく変化しています。人工知能(AI),ロボット工学,ナノテクノロジーなどが急速に進歩し,消化器病の診療,研究も,これら新技術の動向と歩調を合わせざるを得なくなっています。そこで第107回総会のテーマは「消化器病学のゆくへ: 第4次産業革命のさなかで」としました。

特別講演としては,大阪大学基礎工学研究科の石黒浩先生にはアンドロイド研究,東京大学医療情報学の大江和彦先生には医学,医療におけるAIの位置付けについて,それぞれ最先端の情報をご教示いただきます。また,「消化器領域におけるAI研究の進歩」に関するシンポジウムを行い,日本の消化器病学における現状と課題を整理する予定です。また,「消化器病のゆくへ: 歴代理事長にきく」と題する特別企画では,跡見裕先生,菅野健太郎先生,下瀬川徹先生にご登壇いただき,会員の皆さんにメッセージを発していただきます。

今回は上記のテーマに沿った企画とともに,消化器病学で問題となっている46の主題を取り上げ,シンポジウム,パネルディスカッション,ワークショップの形式で討論していただきます。消化管,肝,胆道・膵の3領域の医師,研究者が,一堂に論じる企画を増やすことを目指し,12主題は消化器領域全般に跨る統合的な企画にしました。その一つがアルコール関連臓器障害であり,これと関連した特別講演として,Southern California Research Center(USA)のHidekazu Tsukamoto先生を招聘しました。また,今年になって新たな課題として浮上したCOVID-19に関しても,急遽,特別講演とワークショップを開催します。また,私が専門とする肝不全に関しては,International Forumでacute-on-chronic liver failure(ACLF)を取り上げることを認めていただき,UCL Medical School(UK)のRajiv Jalan先生,Institute of Liver & Biliary Science(India)のShiv Kumar Sarin先生,Promethera Biosciemes(Belgium)のEtienne Sokal先生を招聘しました。彼らの講演の後には,パネルディスカッションを行い,Jalan先生とSarin先生の研究室の若手研究者にも発表していただきます。International Forumと主題演題を組み合わせた新たな形式になります。なお,今回はこの企画も含めて計8つのパネルディスカッションを用意しましたが,いずれもPros & Consの形式で,異なる立場の2名の先生が基調講演を行って,これを基にして演題の発表し,討論していただきます。また,第107回総会では,メディカルスタッフセッションで会員外の医療従事者が発表することを認めていただきました。17日(土)の午前は肝炎医療コーディネーター,午後は両立支援コーディネーターのセッションで,何れもミニオーラルでの発表後にパネルディスカッション形式で討論を行います。

以上のように新たな企画を盛り込んだ新機軸の総会になります。なお,COVID-19の蔓延下であり,WEBでの発表,聴講も可能にしたHybrid開催としました。講演と討議の内容は,発表者のご許可をいただいた上でon demandで1ヶ月間放映し,後日,聴講することも可能にいたします。会員の皆様に有益な総会になるように,教室員が一丸となって,鋭意準備を進めています。WEBをご活用いただき,多数の会員の皆さんのご参加をお待ちしております。

第107回日本消化器病学会総会 会長
埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科 教授
持田 智