2023 ICLS コース・ブラッシュアップセミナー
2023年7月27日(木) 14:10-15:50 100分間 第6会場 大学棟205
座長)
豊田 洋 済生会横浜市南部病院 救急センター長
林 峰栄 沖縄ERサポート、新おきなわICLSコース世話人
コメンテーター)
畑田 剛 桑名市総合医療センター 救急科
プログラム)
「ICLS コース企画運営委員会からの報告」
豊田 洋 済生会横浜市南部病院 救急センター長
COVID-19 前中後でのコースや WS の開催数を報告する。
第1部「ICLSコース関連」
1.江副 明佳(えぞえ はるか)
公立豊岡病院組合立豊岡病院 但馬救命救急センター 看護師
「ICLS コース受講による臨床効果の検証〜心停止時初期対応の時間を比較
【はじめに】
シミュレーションを用いた蘇生教育が行われているが、その臨床的効果に関する検証は乏しい。
【目的】
ICLSコース受講の有無による、心停止時初期対応時間の差を明らかにする。
【方法】
当院における連続8年3カ月間の成人心停止症例に初期対応した看護師を対象とし、ICLS受講の有無、院内救急コールまでの時間(A)、CPR開始までの時間(B)、初期波形認識までの時間(C)を検証した。診療録から後ろ向きにデータ収集を行い、群間比較にはマンホイットニーU検定を用いた。また看護師経験年数とABCの時間の関連について回帰分析を行った。結果は中央値(四分位範囲)で記載した。【結果】受講あり群は17名、なし群は51名であった。A時間:あり群1(1−4)分、なし群2(0−3)分、B時間:あり群0(0−1)分、なし群0(0−1)分、C時間:あり群1(0−1.75)分、なし群2(1−5)分と全ての時間であり群が有意に短かった(P<0.01)。看護師経験年数とABCの時間に関連はなかった。
【結論】
心停止時初期対応の迅速性において、ICLS受講は効果がある。
2.名知 祥(なち しょう)
中濃厚生病院 救命救急センター センター長
「COVID-19 による岐阜県 ICLS コースへの影響」
岐阜県では救急隊員の教育コースとしてICLSコースを位置づけている。岐阜県MC協議会協力により、県内を4ブロックに分けブロック毎に担当消防本部を決め、基幹病院と協力して県MCの教育コースとしての位置づけでオープンコースを持ち回りで地域開催している。このコースの開催をベースに岐阜地域中心に院内コースも独自開催されている。2020年からのCOVID-19流行が岐阜県内のICLSコースに与えた影響について報告する。
2017年4月~2020年3月と2020年4月~2023年3月のCOVID-19流行前後3年間ずつのコース開催状況、受講者数、インストラクター参加数を比較してみると、開催数141回vs127回、受講者数1723名vs1315名、インスト数2024名vs1453名といずれもCOVID-19後3年間の方が減少していた。年度で見てみると、COVID-19流行直後の2020年度はコース開催数、受講者数とも大きく減少しており、開催していても岐阜地域がほとんどでそれ以外の地域での開催は激減していた。一方で2022年度はCOVID-19流行前の水準まで回復していた。感染症流行期においても、感染予防対策を講じながら必要な教育としてICLSコースを地域限定ながら継続開催したことで、県内全体でのコース開催も比較的速やかな回復につながったと考えられた。
3.大谷義孝(おおや よしたか)
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科
「コロナ禍前後での当院 ICLS コースの開催の変化」
【はじめに】
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、感染対策も変わってきている。当院ICLSコースでのコロナ禍以前とコロナ禍でのコース開催における変化をまとめた。
【埼玉医科大学国際医療センターICLSコース概要】
コロナ禍以前は定期開催:4回/年、6ブース、受講者6名/グループ、指導者4~5名/ブース、チューター1名/グループ、CMD・CC各1名。午前中にBLS、気道管理、モニター・除細動、IV/IOの各スキルセッションを行い、午後はシナリセッション、試験を行っていた。
コロナ禍では3ブース開催とし、コロナ感染の流行状況により適時、受講生数、インストラクター数を調整した。
1コース当たりのブース数が減少したため、適時臨時開催を行うことで、需要を満たした。
また、健康チェック表の利用、明確な中止基準の設置、オアシスを廃止し個別にお菓子とペットボトルのドリンクを配ることでコース開催での感染を防いだ。
受講生へのアンケート調査ではコロナ禍でのコースであっても理解度、満足度の高いコースが開催できた。
【まとめ】
感染症流行中でも、十分な感染対策をとることで安全に満足度の高いコースを開催することができた。
第2部 「WS 関連」
1.大石 奨(おおいし すすむ)
豊田市消防本部 救急救命士
「ICLS 指導者養成ワークショップ(WS)の設計と成果〜インストラクショナルデザイン(ID) を用いた効果〜」
【はじめに】
医療はKKD(勘・経験・度胸)ではなく、EBM(Evidence-BasedMedicine)が重要であるが、教育も理論に基づく必要はある。
【目的】
WSをIDで設計し、理論に基づいた指導法を習得させる。
【方法】
WSカリキュラムは、1.学習目標の分類、2.学習目標の設定、3.セッションの組立て方法、4.学習の動機づけ、5.フィードバック、6.想定練習の構成として救急医学会の認定を受けた。成果の測定は、多段階尺度で意思表示する選択項目と自由記述項目のアンケートを受講直後に実施した。
【結果】
参加者は医師・看護師・救命士など18名であった。参加の反応(意味微分法:1弱い〜7強い)は、「興味深かったか」6.8、「やりがいがあったか」6.6、「自信が持てたか」5.4、「満足したか」6.4であった。全員が、“このような研修を続けてほしい”、“同僚や後輩に勧めたい”と回答した。自由記載では、“教育の視点からICLSを見つめ直すことができた”、“動機づけは部署教育でも役立つ”などの意見があった.
【考察】
ICLSを題材に学びのプロセスを学んだことで、目標設定や目標に到達させる工夫の重要性が強化できたと考えられる。
【結語】
効果的・効率的・魅力的な指導法を習得した指導者育成ができた。
参考文献鈴木克明(2015)研修設計マニュアル,北大路書房(医療教授システム学を導入してICLS指導者養成ワークショップをやってみたら面白かったという話です。)
2.林 峰栄(はやしほうえい)
沖縄ERサポート、新おきなわICLSコース世話人「指導者養成ワークショップをもっと楽に開催するための工夫」
2013年から認定インストラクター申請のために指導者養成ワークショップ(以降WS)の受講が必須となった。しかし、WSの開催は正直手間がかかる。もっと楽に開催できないかと考え、既存のICLSコースの会場と資器材を利用するコース併設型WSを開催してみた。その結果、負担が減り、最近は年4回程度のWSを開催できるようになっている。WSへ参加できる機会が増えたことで、認定インストラクターの数が増え、さらに認定WSインストラクターの数も増えたことで、WSのブース数を増やすこともできるようになった。
WSの開催数は地域により差があると言われているが、人口あたりで比較してみたところ、沖縄県は全国平均の2.5倍の開催数であることがわかり驚いた。安定して継続的にWSを開催していくためにも、できるだけ負担を減らす工夫は必要である。当日は、新おきなわICLSコースで行っている併設型WSについて具体的に紹介したい。