第43回日本脳神経外科コングレス第43回日本脳神経外科コングレス

会長挨拶

第43回日本脳神経外科コングレス総会
会長 片岡 大治
(国立循環器病研究センター 脳神経外科部長)

第43回日本脳神経外科コングレス総会を、2023年5月18日(木)~21日(日)の4日間の日程で、大阪国際会議場にて開催させていただきます。日本脳神経外科コングレスは、脳神経外科医の生涯教育と科学的研究による脳神経外科学の進歩を通して、国民の健康・福祉に貢献することを目的として1980年に創設されました。創設以来、歴代会長ならびに会員の先生方のご努力により、我が国の脳神経外科学の発展に大きく貢献してまいりました。日本脳神経外科コングレスの紋章に書かれたAncora imparoはルネッサンスの三大巨匠の一人であるミケランジェロ・ブオナローティが好んで用いたフレーズで「私は今でも勉強している」という意味をもっています。すべてのプログラムがプレナリーとして構成され、会員が一堂に会して専門領域を超えて最新の知見を勉強する本会は、我が国の脳神経外科医の向学心・探究心の高さを象徴しています。

今回の総会の主題は「Consensus and Controversy in Neurosurgery – どこまでがコンセンサスで、何が議論になっているのか- 」としました。本会の目的である生涯教育の本質は、時々刻々と進化する脳神経外科学の最新の知見にcatch upすることだと思います。脳神経外科の領域毎の専門分化が進む昨今において、それぞれの分野で病態の解明、新しい疾患概念の提唱、診断・治療の進歩が進み、数多くの議論が繰り広げられております。一方で、多くの優れた基礎・臨床研究により良質なエビデンスが創出され、それぞれの分野でコンセンサスが築かれています。また、コンセンサスも時代の潮流の中で変遷があり、数年前の常識が非常識になることも稀ではありません。現時点におけるコンセンサスは何なのか、議論になっているのはどの部分なのかにつき、それぞれの分野を代表する演者の先生にご講演いただき、自分の専門領域のみならず、専門領域外においても最新の知識がupdateできるように、プログラムを練りたいと思います。

この3年間新型コロナウイルス感染症の影響で学術集会のあり方が大きく変わりました。多くの会員が一つの会場に集まる従来の現地開催は行うことができず、私たちは学会を通じた議論や交流の機会を失いました。一方で、オンライン配信によるWeb開催が主流になり、限られた時間の中でも、遠方からであっても、学会にアクセスすることができるようになりました。今後はアフターコロナ時代の持続可能な学会開催形態を模索していく必要がありますが、日本脳神経外科コングレスではアフターコロナにおいても、現地開催とオンライン配信のハイブリッド形式として学術総会を開催していくことを理事会で決定いたしました。会員の利便性を維持したまま、学会ならではの対面での議論・交流の場を確保するという理想の実現のため、本会では全体としてハイブリッド開催の形態をとりながら、Webのみのセッション、現地およびWeb双方での参加が可能なセッション、できるだけ現地に集まっていただき会場で議論を行うセッションと濃淡をつけることといたしました。従来平日の木曜日に行ってきた若手向けの「専攻医セミナー」と手術手技に特化した「ビデオセミナー」を前週の5月13日(土)にWebで開催し、多くの若手・中堅をはじめとする先生方に聴講していただきたいと思います。5月18日(木)には、現地でしか行うことができないハンズオンセミナーを企画しています。5月19日(金)および5月21日(日)は、それぞれの領域のプレナリーセッションを会場もしくはWebを通じて、できるだけ多くの方々に視聴していただきます。日本微小脳神経外科研究会(中尾直之会長)との合同セッションから始まる5月20日(土)は、多くの方々に会場に集まっていただき、皆で議論ができるようなセッションを企画しています。特別講演では、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構・副機構長の横山広美先生に「科学者の信頼と社会的責任」をテーマにご講演いただきます。災害やパンデミックの際に、私たち科学者は専門的立場から情報発信を行う必要があります。また私たちは日々診療の中で、患者さんやご家族と医学医療に関するコミュニケーションを行っています。科学的・医学的な知識・情報をどのように社会や一般の方に伝えていくべきかという観点から、科学コミュニケーションのエキスパートである横山先生のお話しをお聞きしたいと思います。Web参加の利便性も残しつつ、現地開催主体の日も設け、会員の皆様への有意義な交流の場の提供ができればと考えております。

個々の企画の詳細につきましては、これからプログラム委員会で検討してまいりますが、本会が会員の皆様のさまざまなニーズに対応し、多くの皆様にとって有意義なものとなるよう考えていきたいと思います。パンデミックや国際情勢の不安定化などの不確定要素はございますが、2023年初夏の大阪で皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。奮って本会にご参加いただきますよう、心よりお願い申し上げます。