ご挨拶

第40回臨床研修研究会会長、国立病院機構長崎医療センター院長
八橋 弘

メインテーマ「臨床研修-縮小と偏在の時代を生き抜く知恵と勇気」

令和5年4月、総務省から昨年1年間に日本の総人口は55万6千人、日本人人口は75万人減少したと報告されました。一つの都道府県の人口が1年間でなくなるというスピード感で日本は変化しつつあります。今の日本の医療の現場では、このように加速化する人口減少と高齢化、医師配置の偏在、医師の労働時間の制限などの問題を抱えながらも、これらの状況の変化に応じて様々な工夫をすることで、適切な医療を展開させようと努力しています。

そのような厳しい環境下においても、病院は臨床研修制度のもとで優れた医師を継続的に養成しなければなりません。しかし、時代とともに変化する環境の変化に制度が追い付かず、臨床研修制度のあり方についても、以前とは異なる諸問題が発生しつつあるのではないかと考え、このメインテーマとしました。

長崎県においては、60年前から人口減少と高齢化が始まり、現在もその変化は加速しています。医師多数県の長崎においても高齢化した医師が多数を占めており、今の時代の救急医療に対応することができる若手医師が足りない状況にあります。また長崎では多くの離島を抱えています。また医師の偏在対策のひとつとして地域医療の担い手を確保する為に医学部においても地域枠という制度を設けられました。長崎では、これらの諸問題についての気付きと対策の取り組みは早く、50年間から離島医療制度とローテイト研修を開始し、他の都道府県と比較すると厳しい環境下でも適切な臨床研修をおこなってきたという自負があります。また離島に点在した病院の統廃合と病院機能の集約化にも早くから取り組んできました。これらのことを知恵と勇気と表現しました。

第40回臨床研修研究会では、縮小と偏在の時代の中での臨床研修のあり方の問題点とその解消の為の工夫について議論を長崎の地でおこないたいと考えています。多くの方のご参加を心からお待ちしています。