ご挨拶

第50回日本急性肝不全研究会
当番世話人:日比 泰造
(熊本大学大学院生命科学研究部 小児外科学・移植外科学講座 教授)

このたび、第50回日本急性肝不全研究会を2024年6月12日(水)、熊本城ホールにおきまして当番世話人として主催する運びとなりました。テーマを「未来を拓く」といたしました。急性肝不全は希少疾患ではあるものの未だ致命的な難病であり、自己肝の再生が見られない場合は肝移植が唯一の救命手段となります。生体肝移植は日本が世界を先導してまいりましたが、肝移植の適否の見極めには血漿交換と血液濾過透析を組み合わせた人工肝補助療法が必要であり、日本独自の極めて有用な治療戦略となっております。急性肝不全の過去に学び、現在の未解決問題を克服し、どのような未来を拓くべきか?これから先、肝不全の病態や肝再生の解明が進み、人工肝補助療法そして生体・脳死肝移植の成績向上を積み重ねる中で、再生医療が臨床応用されて、もはや急性肝不全が致命的な疾患でなくなる日をいかに迎えるのか、これを参加者の先生方と議論する場にしたいとの強い思いから、このテーマを選ぶに至りました。

急性肝不全の対策は国家的な課題であり、1977年に発足した日本急性肝不全研究会は治療の開発・普及で中心的役割を担ってまいりました。また日本肝臓学会、日本肝移植学会、厚生労働省の難治性疾患研究班と連携し急性肝不全の診断基準、肝移植適応指針の作成、治療法の標準化などに貢献してきた長い歴史を有します。成人および小児の急性肝不全に関わる外科、内科、小児科、救急、病理、基礎研究と領域を横断した議論が行われることも本研究会の大きな特徴です。今回第50回という節目を迎え、これからの研究会の方向性を共に考える意義深い学術集会を開催できますこと、この上なく光栄と存じます。

第50回研究会はシンポジウム・パネルディスカッション・ワークショップ・口演を含めて全39演題が予定されております。おかげさまで国際共同〜全国レジストリ〜単施設研究、そして示唆に富む症例報告まで多くの大変興味深い抄録をご登録いただき、肝臓病学の大家の先生方に座長の労をお執りいただくことになりました。当日、私ならびに教室員一同、「無知の知」「巨人の肩の上に立つ」を胸に刻みつつ学びを深め、ご参加の皆様との熱のこもった活発な意見交換を心より楽しみにしております。また、第50回記念の特別企画として鼎談が予定されております。本研究会において、今日までに得られた貴重な学びをもとに叡智を結集し、次の50回に向けた第一歩を踏み出すことで、未来を拓く礎とできれば望外の喜びでございます。

多くの先生方、関係者の皆様方に熊本の地でお目にかかれますことを祈念しております。

2024年5月吉日