第65回関西胸部外科学会学術集会を2022年6月17日(金)・18日(土)に開催させていただくことになりました。浜松での開催は、2006年に先代教授の故 数井暉久先生が第49回を開催されて以来となります。日本胸部外科学会本会より古い歴史をもつ、伝統ある本学術集会を、再び私共の教室が担当させていただきますことは誠に光栄なことであり、会員の皆様に厚く御礼申し上げます。
今回のテーマは「ア・カ・ル・イ・ミ・ラ・イ」とさせていただきました。これには2つの思いを込めております。1つは、次世代を担う先生方の台頭によって、胸部外科学・診療の明るい未来を実現して欲しいとの思いです。関西胸部外科学会は、日本胸部外科学会の地方会として、若手の登竜門としての役割を担っています。カバーするエリアも広く、開催が年1回であるため参加者も地方会としては多くなっています。若手の先生方にとっては、普段会う機会が少ない先生方と交流し、異なるものの考え方に触れ、また自己アピールする絶好の機会だと思います。今回もCase Presentation Awardを実施し、優秀演題には日本胸部外科学会における発表の機会が与えられます。また若手の先生方に企画から加わっていただき、座長も多数務めていただく予定です。是非、明るい未来のため、この機会を生かしていただければ幸いです。
もう1つは、長く続いているコロナ禍が早く収束し、明るい未来が来て欲しいとの思いです。COVID-19は全世界の人々の生活に甚大な影響を及ぼし、多くの人命が奪われています。皆様の生活が、一刻も早く安定を取り戻すことを願ってやみません。私たちの職業を取り巻く環境も激変しており、本学術集会も2年続けてweb開催となりました。COVID-19の収束が不透明な現状ではございますが、来年こそは、皆さまに浜松の地にお越しいただき、対面での開催を実現したいと考えております。静岡県には富士山をはじめとする豊かな自然と、おいしいお酒が沢山あります。対面開催が実現した暁には、是非お越しいただければ幸いです。
第65回学術集会では、心臓血管外科分野を私、呼吸器外科分野を本学呼吸器外科 船井和仁病院教授、食道外科分野を本学外科学第2講座 竹内裕也教授が担当し、浜松医科大学の外科が力を合わせて実りある学会になるよう努めてまいります。沢山の先生方のご参加をお待ちしております。
食道癌手術においてはその切除とリンパ節郭清だけでなく、切除後の再建術にも課題が多い。他の消化管手術に比べると縫合不全や吻合部狭窄の発生率が高いこと、長期的に問題となる逆流への対策、胃が使用不可能な場合の再建臓器の選択等、まだまだ一般にコンセンサスが得られているとは言い難い。しかしながら上記の課題解決に向け独自の対策を講じることにより、良好な成績を導き出している施設も見受けられるようである。本セッションではそれぞれの施設におけるこだわりの再建および吻合手技の詳細を提示して頂きたい。さらにその成績も含め、忌憚のない意見を出し合って討論して頂きたい。
外科医は術式、アプローチなどの工夫によりZero complicationを目指していますが、high risk 症例や不幸にして発生した術後合併症に対する管理は治療成績や遠隔期の予後に重大な影響を与えます。そこで、呼吸器外科手術の周術期マネジメントにおいて合併症に対する管理の工夫や処置介入の時期など、各施設での取り組みを発表していただき、明日の診療に活かせる知見を共有したい。特に、保存的治療の限界と再手術のタイミング、その成績についての議論が深まることを期待しています。
外科医が治療方針を立てる際、ガイドラインや確立されたエビデンスに基づくことは重要である。しかし外科的治療の対象となる疾患や患者背景は多彩であり、エビデンスの確立が難しい部分も多い。このような中、手術手技や治療方針における「私の工夫」のセッションは、学会でも議論が盛り上がることも多い。本セッションでは、確立されたエビデンスとまでは言えないものの、「私の工夫」として行っている手術手技や治療方針について、その裏付けとなる論文報告(他施設からの報告でも演者ら自らの報告でも良い)まで含めて発表して頂きたい(例:肺癌切除におけるPV先行処理、気胸再発予防の処置、鏡視下手術をより安全にする手技など)。
近年、CT診断の普及により、小型のⅠ期の非小細胞肺癌、特にスリガラス陰影の肺癌の発見が増加している。第二肺癌の治療に備えての呼吸機能の温存や QOL向上を目的として、早期肺癌に対する縮小切除の適応が増えている。このような状況下で、肺葉切除 vs 区域切除のランダム化試験(JCOG0802)が実施され、最終の結果が報告されつつある。しかしながら、全国的な他施設共同試験ではアプローチできない命題が多々残っていると思われる。 JCOG0802の結果を参考にしながら、区域切除の合併症、再発、生存率、呼吸機能、 QOLなどの臨床的意義について各施設での経験をもとにより深い議論をお願いする。
新専門医制度の開始により、修練医には早期に多くの執刀経験が必要である。心臓外科領域で最も執刀機会を得やすい手術の一つが冠動脈バイパスであるが、一方で複雑病変など難易度の高い症例が増加しているため、どの程度執刀数が増加しているのかなどその実態や成績は明らかでない。そこで、卒後あるいは修練開始後10年以内の若手術者による冠動脈バイパス術(一部吻合のみは含まない)の術式(On, Offなど)、枝数、グラフト材料とデザインなどの実態を明らかにし、早期成績を同施設のシニアの成績と比較し相違点を検討した上で、可能であれば非劣勢を示して若手が執刀するの妥当性について論じて頂きたい。
僧帽弁形成術を中心に低侵襲小切開心臓手術(MICS)が大きな広がりを見せてきており、施設によっては、2番・3番手の先生にもMICSでの執刀が回ってくる機会も増えてきている。その一方で、MICSで手術したために正中切開では起こりえなかった合併症に出会うこともある。本セッションでは卒後20年目までの先生限定で、自身のそれまでの正中切開・MICSでの心臓手術の経験数を明らかにしていただいた上で、シミュレーション・off the job trainingの有無や内容といった執刀前の準備、自身のMICSデビュー症例、執刀開始後これまでの成績と失敗やヒヤリハット経験、指導医から学んだこと/あらかじめ学びたかったことを共有していただきたい。
本ビデオシンポジウムでは若手小児心臓外科医による「人生初の複雑心疾患手術の執刀経験」を募集します。「人生初の動脈スイッチ」、「人生初のフォンタン手術」、「人生初の房室弁形成」、「人生初のファロー四徴症修復術」等、疾患は問いません(複雑先天性心疾患に限ります)。執刀に際して考えたこと、心掛けたこと、上手くいったこと、上手くいかなかったこと、次回に向けての教訓などを盛り込んだご発表をお願いします。指定討論者や聴衆を交えて一題ごとに活発な討論を行いたいと思います。
患者の高齢化とともに、TEVARが第一選択となる症例も多くなってきている。TEVARは人工心肺を用いた開胸手術よりも明らかに低侵襲であることは事実であるが、脳脊髄合併症の発生のためにその低侵襲性が生かされない症例も散見される。今後のさらなるTEVARの普及に向け、各施設の脳脊髄合併症の予防戦略をこのパネルディスカッションでご提示いただき、熱い議論をしていただきたい。特に、今後の低侵襲治療の主体となる比較的若い世代の演者(U50)にご登壇いただければ幸いである。
急性A型大動脈解離は急性大動脈症候群の中でも緊急開胸手術が必須の疾患であり、循環器病対策推進基本計画の中でも本疾患に対する各医療圏での治療体制の確立が重要であるとされている。したがって心臓血管外科の独立した術者が必ず習得すべき手術の一つであると考えられる。本パネルディスカッションでは、本疾患の術者を経験した40歳代の先生方に登壇いただき、手術を安全確実に進めるための所属施設あるいは自分自身の手順、自分なりの工夫や吻合方法、また今までに経験したピットフォールとその回避方法・対策などをご発表いただき、百戦錬磨の指定討論者とともに議論したい。