会長挨拶

第56回日本糖尿病学会近畿地方会会長 佐々木秀行
第56回日本糖尿病学会近畿地方会
会長 佐々木秀行
(和歌山県立医科大学 みらい医療推進センター サテライト診療所本町 糖尿病・代謝部門)

第56回日本糖尿病学会近畿地方会を、「青洲に学ぶ糖尿病医療の将来~基礎、臨床、教育・啓発の融合~」というテーマで開催させていただきます。和歌山県糖尿病協会の近藤溪会長が世話人を務められます第55回日本糖尿病協会近畿地方会と同時開催となります。

青洲(華岡青洲)は紀州で生まれ、1804年に世界で初めて全身麻酔を用いた乳がん手術を成功させたことで有名ですが、約20年間にわたる動物実験や臨床試験を繰り返したことが知られています。また、手術成功後は多くの優秀な医学者を教育し、全国に輩出することで日本中の患者を救済しました。200年以上前に、糖尿病医療のあるべき姿であろう、基礎・臨床研究から診療、教育・啓発に及ぶ広範な医療を実践したことは驚くべきことで、範とすべきと考えテーマに掲げました。

近年の糖尿病診療の進歩は目覚ましく、患者の平均HbA1c値は着実に低下し、死因に占める血管合併症の割合は、悪性新生物、感染症に次ぐ第3位に後退しました。しかし、死亡年齢は日本人一般より明らかに若く、合併症で著しいQOL低下に苦しむ多くの患者がおり、更なる努力が必要です。糖尿病の予防・治療の成果を得るには患者自身の行動変容が必須であります。したがって、基礎および臨床医学者、メディカルスタッフが互いに緊密に連携するチーム医療、言い換えれば、“基礎、臨床、教育・啓発の融合”が大変重要と考えられます。

本学会では、実臨床の場で提起された問題を発表していただき、活発な議論を通じて、参加者がレベルアップできる場となることを目指します。特別講演では、和歌山労災病院病院長の南條輝志男先生に、「糖尿病医療の将来展望-紀州の先人に学ぶ-」と題してご講演いただきます。また、高齢化・多様化する糖尿病患者への対応を考える「個々の病態に応じた糖尿病診療」、「高齢者糖尿病の診療・ケア」の2つのシンポジウム、女性糖尿病医をプロモートする委員会が企画するワークショップ、日本糖尿病療養指導士認定機構との共催によるCDEJ療養指導セミナー(交流集会)のほか、5題の教育講演、3題の専門医更新のための指定講演を企画いたしました。一般演題には320題と多くの演題を登録していただきました。

第55回日本糖尿病協会近畿地方会は、近藤溪世話人が工夫を凝らされ、参加者全員に楽しんでいただけるよう「お楽しみ系」の企画を立てております。国際大会で優勝経験のある亜空亜SHINの変面マジック、和歌山の素人医療スタッフ劇団「和歌山えーわっしょ(A1c)劇団」による糖尿病腎症の啓発を目的とした「コント劇」で笑いながら勉強していただきます。また、4府県代表者による体験談発表では貴重な経験を共有して交流を深めることもできます。

ご参加される皆様にとって実り多き会になることを祈念いたします。