2010年以後、本邦の甲状腺外科診療は大きく変わりました。第一には、わが国独自のガイドラインが発表されたことです。翌年には英訳版が世界に向けて発信されました。その結果、高リスク乳頭癌に対する放射性ヨウ素(RAI)内用療法を前提とした全摘術が増加すると共に、RAI実施環境の整備も進みました。低リスク微小乳頭癌の積極的経過観察は米国のガイドラインにも影響を与えました。ハード面では新しい手術機器が登場し保険加算の適応拡大により、エナジーデバイスや術中神経モニタリングは甲状腺手術に欠かせない存在となりつつあります。根治切除不能の分化型甲状腺癌に対する分子標的薬治療は臨床家に浸透し、その開始タイミングや長期マネージメントの方法についても次第に明らかになってきました。
この10年間の進歩はとりわけ顕著であり、学ぶべきことが何倍にも増加したと感じられます。本会ではこれら注目すべき研究内容の最先端(頂)を取り上げると共に、会員の皆様の要望を網羅し、プログラム編成にも留意して、参加しやすく満足度の高い学術大会となることを目指します。過去6回にわたり別会期で開催されてきた甲状腺副甲状腺術中神経モニタリング研究会は発展的に解消され、その内容は本学術大会のプログラムに入ります。これまで日程の関係で参加出来なかった皆様には朗報かと存じます。