シンポジウム1
「切除可能膵癌に対する術前治療」
司会:海野 倫明(東北大学 消化器外科学)
上坂 克彦(静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科)
司会の言葉
切除可能膵癌に対する術前治療は賛否両論がありましたが、2019年1月にPrep-02/JSAP05試験の結果が発表され、今後、術前化学療法が主流になるものと思われます。しかしながら全国施設への普及とさらなる治療成績向上のためには、様々な未解決問題が残っています。術前療法不要例の絞り込みをどうするか、術前化学療法の最適レジメンはなにか、放射線療法付加の是非、術前組織診断困難例への対応、病理学的効果判定法、術後補助化学療法をどうするか、などです。また術前治療時代に突入することで、膵癌術前診断法も再構築が必要です。良悪性鑑別診断、EUS-FNAによる播種の可能性、微小転移検出のための審査腹腔鏡の是非、術前期間中の胆道ドレナージ法、感染対策、術前の栄養管理とリハビリテーションなど、切除可能膵癌の諸問題を議論できたら幸いです。外科のみならず、消化器内科、腫瘍内科、放射線科、病理、リハビリテーション科、などの多くの診療科からの演題を期待しています。
シンポジウム2
「慢性膵炎の診断基準改訂の意義」
司会:入澤 篤志(獨協医科大学 医学部 内科学(消化器)講座)
正宗 淳(東北大学大学院 消化器病態学分野)
司会の言葉
慢性膵炎は、臨床診断基準に則った臨床徴候と画像診断の組み合わせにより診断するが、慢性膵炎という疾患を念頭に置いて診療を進めなければ、確定診断に至ることが難しいことも少なくない。このたび、慢性膵炎臨床診断基準が10年ぶりに改訂されることとなった。本改訂では、mechanistic definitionに基づいた新たな慢性膵炎の定義や画像診断としてのMRCP所見の格上げ、早期慢性膵炎診断基準における臨床徴候の診断項目の追加、EUS所見の簡素化などが取り入れられている。 本セッションでは改訂慢性膵炎臨床診断基準について、その検証や残された課題などについて、実臨床に即したさまざまな観点からのご発表を頂き、今後の改訂にむけた礎としたい。多くの応募を期待する。
シンポジウム3
「p-NEN診療ガイドラインの問題点」
司会:伊藤 鉄英(福岡山王病院 膵臓内科・神経内分泌腫瘍センター)
土井 隆一郎(大津赤十字病院 外科)
司会の言葉
神経内分泌腫瘍(NEN)は希少腫瘍であるとともに、全身臓器に発生して多彩な臨床症状を呈するため、診断・治療に関しては複数の診療科による連携体制が必要であり、また正しい病理診断に基づいた治療選択が必要となる。わが国におけるNENの診断と治療の標準化を目指して、2015年に初めての膵・消化管NEN診療ガイドラインが発刊された。その後、NENに関する新たな進展が数多くあり、これをもとに2019年に第2版が発刊されたところである。第1版発刊後の大きな変化としては、2017年及び2019年に膵・消化管NENにおけるWHO分類が改訂され、組織が高分化型でKi-67指数が20%を越すNETG3という新たなカテゴリーが加わったことがあげられる。また外科治療では、腫瘍径が小さなp-NENに対する海外における治療選択の考え方に変化がみられた。第2版では、これらの変化を踏まえた上で、より臨床に則した内容に改訂されている。第2版は、評価委員による評価、各種学会における公聴会、ウェブページにおけるパブリックコメントなど、複数のレヴューを経ているが、本シンポジウムでは実際にガイドラインを参照した方々から、臨床上の問題点をより具体的に提示していただきたいと考えている。
ビデオシンポジウム1
「低侵襲膵手術の進歩」
司会:永川 裕一(東京医科大学 消化器小児外科学分野)
堀口 明彦(藤田医科大学 医学部消化器外科学講座 ばんたね病院外科)
※発表スライドは英語で作成をお願いいたします。
司会の言葉
本邦における低侵襲膵手術は安全性確保の観点から諸外国と比較し普及は遅れたが、高難度手術導入おける様々なシステムが構築され、導入する施設が少しずつ増加している。腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の難度は高く導入時の安全性の確保が重要となる。このためlearning curveを短縮される定型術式の確立は重要な課題である。一方、拡大視効果で得られる微細な解剖学的構造の把握は安全性の高いアプローチ法を見つけ出す可能性がある。またロボット手術の導入により安定した再建が期待される。膵癌における腹腔鏡下膵体尾部切除術は早期回復が期待でき補助化学療法の重要性を考えると、今後さらに普及していく手術と考える。しかしながらアプローチ法、術野展開法は様々であり、コンセンサスが得られる術式の定型化が望まれる。本セッションでは安全性、普及性に重点をおいた定型的な術式を構築していく上で、feasibleと考える各施設の手術方法と手術成績を呈示して頂きたい。
ビデオシンポジウム2
「超音波内視鏡を用いた膵疾患の診断と治療」
司会:北野 雅之(和歌山県立医科大学 消化器内科)
良沢 昭銘(埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科)
司会の言葉
超音波内視鏡(EUS)は膵疾患診療に欠かせないツールとなっている。EUSは他の画像診断と比較すると高解像度であるため、膵内小病変の検出・早期慢性膵炎の診断に重要な役割を担っている。また、造影エコー、エラストグラフィ等の新規技術も加わり、血流・硬度から診断に迫ることができるようになった。EUS-FNAは、膵腫瘍性病変の病理診断の第一選択肢となっているが、穿刺針のサイズ・形状、穿刺法、検体処理の工夫等により、その診断精度は向上してきている。最近ではプレシジョン医療目的の遺伝子診断にも応用されている。EUS下治療は、その専用デバイスも登場し、その重要性は増してきている。WON・仮性嚢胞、胆道、膵菅に対するドレナージ術が広く普及し、疼痛コントロールを目的とする神経叢・神経節ブロック、抗腫瘍療法としてのエタノール注入・焼灼術なども試みられている。本シンポジウムでは、これらの多岐にわたる手技をビデオで供覧していただき、手技・工夫・デバイス選択・偶発症等で重要な点を議論し、共有していきたい。
パネルディスカッション1
「自己免疫性膵炎の長期予後」
司会:内田 一茂(高知大学 医学部 消化器内科学)
大原 弘隆(名古屋市立大学大学院 地域医療教育学)
※発表スライドは英語で作成をお願いいたします。
司会の言葉
自己免疫性膵炎は、1995年にYoshidaらによって提唱された日本発の疾患概念であり、その後Hamanoらによって血清IgG4の高値が本疾患に重要であることが報告され、現在では1型自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患の膵病変として捕らえられている。自己免疫性膵炎は、現在のところ慢性膵炎とは区別された疾患とされており、当初はステロイドに反応する予後良好な疾患と考えられていたが、長期的には萎縮や膵石の発生、外分泌機能の低下、慢性膵炎への移行例、膵癌を発症する症例があることなど徐々にその姿が明らかにされつつある。しかし再燃のメカニズム、予測因子は未だ明らかにはされておらず、本当に癌化の危険性があるのか、維持療法の問題点など、まだまだその長期経過については不明な点が多く残されている。本パネルディスカッションでは、自己免疫性膵炎の長期予後というタイトルのもと、病態、再燃、予後、維持療法などの本疾患における長期的な臨床像とその問題点について発表していただき、議論を深めたいと考えている。
パネルディスカッション2 ※指定演者のみ
「この症例をどう治療する?急性膵炎」
司会:阪上 順一(市立福知山市民病院 消化器内科)
真弓 俊彦(産業医科大学 医学部 救急医学講座)
※UMINでは選択可能ですが、指定演題のためご注意ください。
司会の言葉
急性膵炎は、年間受療患者数(推定)が増加傾向にあるが、過去30年間で大きく救命率が向上した疾患である。これは、急性膵炎重症度判定基準(2008)の普及やpancreatitis bundlesの遵守による急性膵炎患者への早期介入が治療成績に貢献したためと考えられる。実臨床では、改定アトランタ分類(2012)による急性壊死性貯留(ANC)や被包化壊死(WON)など局所合併症のカテゴリーが定着するに至った。わが国では、急性膵炎診療ガイドラインの改訂(2015)による診断・治療方針の確立が計られた。しかしながら、いまだ一定数の急性膵炎患者においては治療に難渋することも事実である。本パネルディスカッションでは、輸液・カロリー量の設定、経腸栄養のタイミングや方法、局所・全身合併症の制御など、各施設の治療成績を含めて、治療方法に苦慮した急性膵炎症例を深くディベートする企画とする。 一部指定演者にてアンサーパッドなど双方向的手段も用いながら、難渋症例についての問題点を明らかにしたい。一般公募では多数例のデータや経験をお持ちの方にご発表いただきたい。
パネルディスカッション3
「切除不能膵癌に対する集学的治療」
司会:奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
藤井 努(富山大学大学院 消化器・腫瘍・総合外科)
司会の言葉
診断時の切除不能(Unresectable; UR)膵癌は以前は緩和的化学療法もしくは緩和医療しか選択の余地が無かったが、新規化学療法の承認後、著効例も散見されるようになってきた。また、PD-1阻害剤であるPembrolizumabが保険収載され、放射線治療も進歩してきている。さらに局所進行切除不能膵癌(UR-LA)では、数ヶ月の集学的治療後の外科切除(Conversion手術)により、原発巣の切除が可能となった報告が増加している。本セッションでは、各施設の集学的治療の方針と治療成績を提示して頂き、以前と大きく変わりつつある切除不能膵癌に対する治療において、最善の治療戦略を追究する場としたい。
パネルディスカッション4
「膵内外分泌機能障害の診断と治療」
司会:石黒 洋(名古屋大学 医学系研究科健康栄養医学)
丹藤 雄介(弘前大学 大学院保健学研究科 生体検査科学領域)
司会の言葉
慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵切除では、膵外分泌機能の障害を伴うことが多く、進行すると膵外分泌不全の状態になる。その場合、食事や場合によって成分栄養剤を利用して十分な栄養を摂りながら、膵酵素補充療法を行う必要がある。膵内分泌機能の障害を合併する場合には併せて病態に応じてインスリンの補充が必要となる。しかし、実際の臨床では、膵内外分泌機能の正確な把握、消化酵素製剤の選択・量・組み合わせ、食事指導の内容、微量元素の補充の必要性などに苦慮する。また、疼痛などによる食欲の減退が治療を妨げたり、腸内フローラの変化も相まって頑固な便通異常に苦しんでいる患者さんも多い。本パネルディスカッションでは、様々な臨床上の課題を持ち寄り各施設の取組みを共有して、患者さんのQOLの向上に繋げたい。
パネルディスカッション5
「IPMNに併存する浸潤性膵管癌の特徴」
司会:伊佐山 浩通(順天堂大学大学院 医学研究科 消化器内科学)
大塚 隆生(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科)
司会の言葉
IPMNが通常型浸潤性膵管癌の危険因子として認識されるようになり、分枝型・胃型IPMNに併存膵癌が合併しやすく、併存膵癌切除後長期生存者に残膵再発する頻度が高くなるなど、少しずつその特徴が明らかにされてはきたが、併存膵癌は依然進行癌で診断されることが多い。これはIPMN経過観察中の併存膵癌診断のための有効な画像診断モダリティーや経過観察のストラテジーが確立されていないためで、IPMN国際診療ガイドラインでも併存膵癌発生を考慮した経過観察のアルゴリズムは示されていない。本セッションではIPMN併存膵癌の実態、早期に診断するための経過観察法の工夫、IPMN併存膵癌とIPMN非併存膵癌の違い、IPMN由来癌との鑑別法、同一膵内にIPMNと併存膵癌が発生するメカニズムの解明など、日常臨床から基礎研究まで含む幅広い視点からIPMN併存膵癌に関する現状と今後の課題について討議していただきたい。なおIPMN由来癌のみに絞った演題は対象としない。
パネルディスカッション6
「IPMN国際診療ガイドライン2017の検証」
司会:中村 雅史(九州大学 臨床・腫瘍外科)
真口 宏介(手稲渓仁会病院 教育研究センター)
司会の言葉
「粘液産生膵癌」に始まった疾患概念は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)として定着し、2006年の国際診療ガイドライン初版により、世界的に一定の方向性が示された。その後、2012年の改訂に続き、2017年に2度目の改訂が報告された。国際診療ガイドライン2017の主な改訂ポイントは、分枝型IPMNのリスク因子に関することであり、MNの高さ等が規定され、診断基準が客観的になり手術適応をより明確に判断できるようになった。しかしながら、MNの高さの規定に関しては根拠となるエビデンスに乏しく、その後の検証が必要と考える。また、経過観察に関しても腫瘍径で細かく規定されたが、腫瘍径が関係しない浸潤性膵管癌の併発リスクに関する問題は残っている。その他、国際診療ガイドライン2017に関する診断基準、手術適応、経過観察法等に関し、外科・内科問わず多方面の立場から検証を行っていただき、新たな改定の糧としたい。
パネルディスカッション7
「急性膵炎に対する局所合併症治療」
司会:糸井 隆夫(東京医科大学 消化器内科)
佐田 尚宏(自治医科大学 消化器一般移植外科)
※発表スライドは英語で作成をお願いいたします。
司会の言葉
急性膵炎の初期治療において全身管理が最も重要なポイントであるが、局所合併症としての膵周囲液体貯留(pancreatic fluid collection: PFC)や膵管破綻(disconnected pancreatic duct syndrome: DPDS)に対する局所管理はむしろ極めて重要な晩期治療とされている。近年ではERCPと合わせてEUS下の消化管的ドレナージが主流となっているが、DPDSを合併した場合に単なるPFCに対するドレナージのみで良いのか、いつどのようにDPDSを診断し、ERCPによる治療を付加するのか、EUS下に留置したステントを抜去すべきか否か、など未だ議論の余地がある。さらに2018年よりPFCに対するEUS下ドレナージ専用のステント(Lumen-apposing metal stent: LAMS)も市販化され、ドレナージのみでは治療に難渋するWalled-off necrosisに対して内視鏡的ネクロセクトミーが容易にできるようになった。本パネルディスカッションではこうした局所合併症治療について様々な角度から議論を行い、今後の診療に生かせればと考えている。多くの応募を期待する。
パネルディスカッション8 ※指定演者のみ
「この症例をどう治療する?慢性膵炎」
司会:乾 和郎(医療法人山下病院 消化器内科)
岸和田 昌之(三重大学 肝胆膵・移植外科)
※UMINでは選択可能ですが、指定演題のためご注意ください。
司会の言葉
腹痛を有する慢性膵炎の治療は、先ずは生活指導、食事療法や薬物療法にて内科的保存治療が試みられるが、無効例には内視鏡的結石破砕や膵管ステント留置など内視鏡的治療が行われ、ESWLの併用も考慮される。さらに無効例や再発例には膵管減圧術や膵切除術といった外科手術が選択される。実臨床では、内視鏡的治療法の選択や期間・回数、膵石の存在部位や大きさからESWL施行の有無、手術の至適時期や術式が検討課題となるが、治療選択を比較しているエビデンスは多くないことに加えて、ESWLを保有しているかどうか、胆膵内視鏡および膵臓外科の専門医がいるかどうかという施設の医療環境も影響して治療方針の決定に苦慮することも少なくない。本パネルディスカッションでは、個々の提示症例に対して内視鏡治療、ESWLおよび外科治療のエキスパートの先生方に治療方針についてコメントを頂き、会場の参加者にはアンサーパッドを用いて全体で検討して本邦での現状と課題を明らかにし、今後の展望を議論したい。多くの内科および外科の先生方の参加を期待する。
ワークショップ1
「遠隔転移を有する膵NENに対する治療選択」
司会:青木 琢(獨協医科大学 第二外科)
森実 千種(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
司会の言葉
遠隔転移を有する膵NENに対する治療は、ホルモン療法や分子標的薬等の開発が精力的に行われ、この10年間で治療選択肢が飛躍的に増加した。一方で、選択肢が増えたがゆえの臨床的疑問・課題も多い。増殖活性の緩やかなNET G1・G2においては積極的に切除術を検討しうる遠隔転移例が存在する。そこには「内科的治療が発展した現在における切除術やIVR的治療のReal world data」「肝転移の切除の前後に補助療法は必要なのか」「遠隔転移が切除不能の際に膵原発に外科的アプローチをするべきか」といったクリニカルクエスチョンがある。また、NET G3については遠隔転移例に対する切除適応自体の変遷やマルチモダリティ的なアプローチの意義などが関心を集めている。NECの遠隔転移例は通常切除適応とならないが、切除がメリットになりうる患者がいないのか、といった探索は必要である。本セッションでは多職種間で大いに議論をし、この山積する臨床的疑問・課題の解決のヒントを探していきたい。
ワークショップ2
「良性膵管狭窄に対する治療選択 外科vs内科」
司会:植木 敏晴(福岡大学筑紫病院 消化器内科)
松本 逸平(近畿大学 医学部外科学教室 肝胆膵部門)
司会の言葉
良性膵管狭窄は、急性膵炎後、自己免疫性膵炎、慢性膵炎、膵外傷後、膵手術後などに認め、その病因は多岐にわたる。症状として尾側膵管内圧の上昇により疼痛を主訴とすることが多い。時に悪性疾患との鑑別困難例を認める。また、膵管破綻により膵仮性嚢胞や膵性胸腹水を合併する症例やdisconnected pancreatic duct syndromeを呈する症例など、複雑な病態を呈し、診断、治療に難渋する場合もある。近年の内視鏡的インターベンションの進歩により様々な内科的治療が行われ、非奏功例に対しては外科治療が選択されることが多い。しかし、治療選択や適応、外科治療移行へのタイミングなどに関して明確なエビデンスは示されていない。そこで、内科治療法と外科治療法の短期・長期成績を提示していただき、活発な議論を通じ、これらの課題について一定の結論を導きたい。
ワークショップ3
「ERCP後膵炎の予防策」
司会:窪田 賢輔(横浜市立大学附属病院 内視鏡センター)
安田 一朗(富山大学 第三内科)
司会の言葉
EST、結石除去、胆管・膵管stentingなど様々なERCP関連手技が現在世界中で広く行われている。これらの手技は、ほとんどの症例においては安全かつ効果的に遂行されているが、一定の頻度で偶発症を引き起こしていることも事実である。ERCP後膵炎(PEP)はERCP関連偶発症の中でも最も発生頻度が高く、しばしば重篤な状態に陥る偶発症である。これまでにPEPの危険因子の解析やPEPを防ぐための様々な対策が報告されており、薬物による予防策としてはインドメタシン/ジクロフェナク坐剤、蛋白分解酵素阻害薬、ソマトスタチン、亜硝酸剤、あるいは補液の有効性などが、手技的な予防策としては予防的膵管ステント留置や胆管挿管時のWire‐guided cannulationの有効性などが報告されてきた。こうした予防策をPEPのハイリスク症例に対して、あるいはルーチンに行うことによってPEPの発症あるいは重症化をくい止めようと試みられてきたが、いまだ十分な成果を上げるには至っていない。そこで本ワークショップでは、従来の予防策の検証ならびに新たな試み(基礎研究レベルも含む)について紹介いただき議論したい。
ワークショップ4
「膵癌微小環境に関する基礎研究」
司会:佐藤 賢一(東北医科薬科大学 内科学第二(消化器内科))
庄 雅之(奈良県立医科大学 消化器・総合外科)
司会の言葉
膵癌は間質を豊富に持つことを特徴としています。膵癌特有の間質は主に膵星細胞の増殖によってもたらされ、癌細胞との相互作用が膵癌の進展に深く関与していることが、これまで多くの研究によって示されています。間質では星細胞のほかに、免疫細胞の集簇や腫瘍血管新生なども誘導され、特殊な環境(微小環境)が構築されています。癌細胞は、本来抗腫瘍性の免疫担当細胞を腫瘍促進性の性質に変化させることや、特有の代謝形式が及ぼす影響によって微小環境を自身の進展に利用しています。この癌微小環境は癌幹細胞のニッチとして重要な役割を担っていることも知られています。癌細胞と微小環境のシグナル伝達に様々なサイトカインやエクソソームや代謝産物が関与していることも明らかとなってきました。本セッションではこのような膵癌微小環境研究に関する様々な基礎研究を広く公募し、本分野における新しい知見を発表していただき、治療標的としての可能性を含めた活発な議論を期待しています。
ワークショップ5
「膵癌のconversion surgery:課題と展望」
司会:里井 壯平(関西医科大学 外科学講座 胆膵外科)
村上 義昭(広島大学大学院 医系科学研究科外科)
司会の言葉
切除不能膵癌の予後は、新規抗癌剤レジメンの登場により、局所進行で12-24か月、遠隔転移で8-12か月と延命効果が得られるようになった。しかしながら根治という観点からはその治療効果はいまだ限定的である。最近集学的治療により腫瘍縮小が得られ、切除(conversion surgery)が行われる機会が増えてきており、その予後は切除可能膵癌に対する切除後の生存期間に匹敵することが報告されている。しかしながら、施設ごとに切除基準が異なり、切除率や生存期間に大きな隔たりが存在する。さらに半年以内の再発率がおよそ30%と報告されており、conversion surgeryによる負の影響も考慮されるべきである。本ワークショップ5では、各施設におけるconversion surgeryの切除基準、生存期間、再発率を述べていただき、予後予測因子に基づくより適切な切除基準は何か?という臨床的疑問に対する回答を中心に、各施設における膵癌のconversion surgeryに伴う課題と展望についての発表を期待したい。
ワークショップ6
「ゲノム診療の膵癌臨床への応用」
司会:高折 恭一(市立長浜病院)
古川 徹(東北大学 大学院医学系研究科 病態病理学分野)
司会の言葉
免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬が保険診療において使用できるようになり、ゲノム診療の膵癌臨床への応用が加速している。難治癌の代表とも言える膵癌では、全患者においてゲノム解析が導入される方向に向かいつつあり、解析結果の膨大なデータを如何にして個別化治療につなげていくのかという問題が生じている。先端施設とその関連施設においては、エキスパートパネルでゲノム解析結果を元に治療方針を策定する試みが行われており、一定の成果を挙げつつある。しかし、parp阻害剤やプラチナ製剤の適応となりやすいBRCA関連遺伝子変異は全症例の1割前後、免疫チェックポイント阻害剤の適応となり得る高頻度マイクロサテライト不安定性を有する症例は僅か1-2%であり、より多くの患者がゲノム診療の恩恵を受けるためには、さらなる発展開発が望まれる。本ワークショップでは、膨大なゲノム解析データの解釈と治療への応用、エキスパートパネルの普及と活性化、ゲノム診療の適応拡大など、我々が直面している課題について議論していただきたい。
ワークショップ7
「膵炎研究の最前線:基礎から臨床へ」
司会:大西 洋英(独立行政法人 労働者健康安全機構 本部)
清水 京子(東京女子医科大学 消化器内科)
司会の言葉
急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎などの病態解明ならびに新たな診断・治療法開発に向けた研究は、近年の消化器病研究の中でもホットトピックスとなっている。基礎研究では、膵炎の病態生理メカニズム解明などを目的として、小胞体ストレス、酸化ストレス、オート-ファジーなどの細胞生物学的現象と膵炎発症・進展との関連、各種免疫システムと膵炎との関連などの研究が推進されている。また臨床研究では、各種症例検体を用いてのオミックス解析やゲノム解析などを駆使した研究や、各種診断モダリティーと病理学的研究手法を融合させた研究などが、膵炎の新たな診断・治療法開発に向けて展開されている。本セッションにおいては、これら膵炎の病因、病態の解明ならびに膵炎診療の新たな戦略に結び付く可能性を秘めた、基礎研究および臨床研究の成果を広く発表をしていただき、今後の膵炎研究・診療における新たなマイルストーンとなる議論ができることを願っている。
メディカルスタッフセッション1
「膵炎・膵切除後のサポーティブケア」
司会:洪 繁(慶應義塾大学 医学部坂口記念システム医学)
藤木 理代(名古屋学芸大学 管理栄養学部 管理栄養学科)
司会の言葉
膵は、消化酵素分泌を介して消化・吸収を司っており生命維持に不可欠である。内分泌臓器でもあり、糖代謝も司っている。膵炎はアルコールや薬物、嚢胞性線維症などの遺伝性疾患、腫瘍も含め、様々な原因によっておこる。すべての膵疾患においては、多かれ少なかれ膵内・外分泌機能が障害されるため、医学的治療だけではなく、看護師、栄養士など多職種によるサポーティブケアが欠かせない。また近年は、膵外科手術の治療予後改善により、術後患者数も増加傾向にある上、胃や胆道手術等による消化管再建術後も、膵炎と同様の消化吸収不良を合併する。これら全ての患者に栄養療法等のサポートが必須であるが、我が国の医療水準では、これらの患者に対するサポーティブケアの重要性についての認識が不足しているため、ケアが十分には提供されていない。本セッションでは、膵炎や膵手術後に限らず、膵疾患全般のサポーティブケアについて広く演題を公募する。現状と問題点を明らかにし、今後のケアのあり方について広く議論したいと考えている。奮ってご応募いただきたい。
メディカルスタッフセッション2
「膵癌のサポーティブケア」
司会:長崎 礼子(がん研究会有明病院 看護部)
古川 正幸(九州がんセンター 消化器・肝胆膵内科)
司会の言葉
膵がんの予後は未だ不良で、告知を受けた患者は、疾患に随伴する症状に加え、知り得た情報が不安や恐怖を掻き立て、将来はもちろん、日々の生活についてさえも、冷静に考えることが出来なくなる。また自分自身を社会的弱者とみなし、向き合う医療者がすべて敵に見えてくる人もいるという。名ばかりのチーム医療や、そつない対応で患者の問いを埋め合わせるような応え方をしては、逆に苦しめることも忘れてはならない。悩み苦しむ患者を支え、心身両面からQOLの改善・維持をはかるにはどうしたら良いか、ひいては、患者に向き合う医療と寄り添う医療との違いは何なのか、医師、看護師、臨床心理士、管理栄養士、薬剤師、MSW、すべての職種は、どう協力していけばよいのか、その解決策はまた、それぞれの職種により異なるであろう。本セッションでは、各施設で取り組まれている具体的な施策を発表してもらい、各職種間、各施設間で共有・議論し、「患者の意思決定権を尊重した患者満足度が少しでも高まる医療」とはどういうものか、論じていきたい。
※敬称略