第28回日本遺伝性腫瘍学会学術集会第28回日本遺伝性腫瘍学会学術集会

ご挨拶

第28回日本遺伝性腫瘍学会学術集会
会長 藤原 俊義
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学)

この度、第28回日本遺伝性腫瘍学会学術集会を、2022年6月17、18日の2日間、国立病院機構 岩国医療センターの田中屋宏爾先生との二人会長で岡山コンベンションセンターにて開催させていただくこととなりました。「日本家族性腫瘍学会」から「日本遺伝性腫瘍学会」へと学会名称を変更され、さらに飛躍的に発展されている本学会を担当させていただきますことを大変光栄に存じますとともに、石田秀行理事長をはじめ本学会の理事・評議員の先生方に心より感謝申し上げます。多くの会員の皆様に満足いただけるよう鋭意準備に努めてまいります。

私は個人的には1990年代からがん遺伝子・がん抑制遺伝子研究に関わってきており、今でもp53遺伝子を用いた診断・治療研究に取り組んでいます。多彩な機能を有するp53遺伝子の変異や欠失は個々のがん細胞の個性にも大きな影響を与えており、その生殖細胞系列病的バリアントは乳幼児期から成⼈期まで⽣涯に渡り⾼率にがん・肉腫を発症するリー・フラウメニ症候群(Li-Fraumeni syndrome, LFS)の発症要因となっています。2019年の米国癌学会(2019 AACR Annual Meeting)では、発見から50年の記念として「Li-Fraumeni syndrome and p53」と題したシンポジウムが開催されていました。

最近のがんゲノム医療の発展は目覚ましいものがあり、2018年に策定された「第3期がん対策基本計画」にがん医療の充実としてがんゲノム医療が掲げられ、さらに加速していると感じます。私たちの岡山大学病院も「がんゲノム医療中核拠点病院」に選定され、がん遺伝子パネル検査を中心に積極的に推進してきております。その中で、LFSなどの遺伝性腫瘍が偶発的に診断されるケースも増えているとのことです。がん遺伝子パネル検査の二次的所見として発見される遺伝性腫瘍に対しては、診療科横断的なサーベイランスや遺伝カウンセリングの体制を整備し、データベースやバイオバンク事業などとも連携していく必要があります。今回の本学術集会のテーマ「遺伝性腫瘍のルネサンス -追い続ける夢-」は、遺伝性腫瘍に関する新たな課題を共有し、がん臨床医、遺伝専門医、遺伝カウンセラー、看護師、薬剤師など多職種のチームとして挑戦し続けて行こうというエールの意味です。

6月は梅雨の時期ではありますが、ポストコロナ時代が到来し、「晴れの国」岡山で「追い続ける夢」を明るく語らい、岡山城や後楽園、倉敷などの名所旧跡をご満喫いただけることを祈っております。田中屋先生とともに、岡山大学消化器外科(旧 第一外科)の力を結集してお待ちしております。岡山で多くの皆様にお会いできることを楽しみにしております。


第28回日本遺伝性腫瘍学会学術集会
会長 田中屋 宏爾
(岩国医療センター 外科)

この度、第28回日本遺伝性腫瘍学会学術集会を、2022年6月17日(金)~18日(土)岡山コンベンションセンターにて、岡山大学消化器外科学教授の藤原俊義先生とともに開催させていただくことになりました。身に余る光栄で、皆様に厚くお礼申し上げます。

日本遺伝性腫瘍学会は、遺伝性腫瘍とその関連疾患を対象とし、臨床医、基礎研究者、看護師、遺伝カウンセリング担当者等のメディカルスタッフが連携しながら学術活動を行う世界的にもユニークな学会として発展してきました。「なぜ自分の家族だけ若くしてがんで命を落としたり、何度もがんになったりしなければならないのだろう?」。遺伝性腫瘍の患者さんは、自分のがんの悩みだけでなく、家族が命をがんで落とした喪失体験、自分の体質が子供に遺伝しないかという心配、子供に遺伝したことが分かった時の自責の念、未発症のバリアント保持者いわゆる「プレバイバー」としての葛藤など、特有の悩みをかかえています。このような患者さんに寄り添い、遺伝性腫瘍の克服を目指していく本学会の活動に、ひとりでも多くの方々からご賛同・ご参加をいただけますと、ありがたく存じます。

今回の学術集会のテーマは「遺伝性腫瘍のルネサンス - 追い続ける夢 – 」としました。遺伝性腫瘍の臨床分野で1980年から1990年代にかけて、わが国の家族性大腸腺腫症(FAP)登録数は世界有数でした。当時、FAPの術式として開発されたJパウチ(宇都宮譲二先生.1979年)は、今日でも世界の標準術式です。また、基礎分野でも、遺伝性腫瘍の原因遺伝子APC(中村祐輔先生.1991年)、BRCA1(三木義男先生.1994年)、MSH6(宮木美知子先生.1997年)は、わが国の偉大な先生方が、世界に先駆けて発見しました。このコロナ禍の難局を乗り越えて、諸先輩方の築かれた、かつての勢いを取り戻したい、追い続けてこられた夢を受け継いで新しい時代に向かってさらに発展させたい、と願っています。

さて、本学術集会では、基礎から臨床までの広い領域をカバーする、特別講演、シンポジウム、教育講演、一般演題、ポスターセッションを予定しております。また、新たに文化講演も企画中です。病院や地域で、様々な立場から遺伝性腫瘍にかかわるメディカルエキスパートが一堂に会して議論を行い、最新情報を共有できる魅力的なプログラムとなるよう鋭意準備中でございます。なお、日本遺伝性腫瘍学会学術集会が中国地方で開催されるのは初めてです。中国地方では、瀬戸内海の幸や日本酒がふんだんに楽しめます。また、6月下旬の岡山は白桃の収穫が始まり、一年でも一番おいしい季節です。新型コロナウイルス感染が一刻も早く終息し、皆様と初夏の岡山でお会いできるのを楽しみにいたしております。