会長挨拶

横手幸太郎 (千葉大学長)
この度、第98回日本内分泌学会総会の会長を拝命し、2025年6月5日~7日に幕張メッセ(千葉市)で学術総会を開催する運びとなりました。
内分泌学は、19世紀後半以降、様々なホルモンの発見とともに疾患概念が確立され、多くの日本人医師・研究者の貢献の上に発展し、患者の予後改善に役立ってきた歴史を有します。そして、日本内分泌学会が創設100周年を迎える2026年6月5日までちょうど1年となります。近年では、遺伝子診断の進歩、蓄積された知識と経験を集約した診療ガイドラインの作成、薬物療法の開発、新たなテクノロジーの臨床応用など、さらに目覚ましい進歩を遂げています。このような伝統を継承しつつ、本学会の特色である多様性を十分に活かして、本領域における尚一層の発展を願う次第です。そこで、すべての方々がこれらの財産を享受し、学術的な挑戦を続けることを応援したいという思いを込め、学会のテーマを「異分野融合を通じて内分泌学の未来へ」としました。対面での交流、意見交換を楽しんでいただけるよう現地参加を主体とし、一部オンデマンド配信を併用する形での開催を予定しております。
日本内分泌学会は、幅広い臨床医(内科、小児科、産婦人科、泌尿器科、脳外科)と基礎研究者を擁し、新専門医制度のもとで「内分泌代謝・糖尿病内科領域」が設置されたことにより、新たに若い会員も増加しています。内分泌・代謝疾患と糖尿病のみならず、肥満や心血管病、腎疾患、がん、老年病、ビッグデータ、AI等、多領域にわたるダイバーシティに配慮したセッションや100周年特別企画など、魅力あるプログラムを、各分科会を代表するプログラム委員の皆様とともに計画しています。
特別講演 には、小胞体ストレス研究の第一人者である森和俊先生(京都大学)、エピジェネティッククロックの概念を提唱したSteve Horvath先生(The Altos Lab)という生命科学分野のトップ研究者にご講演いただきます。また、「味を“ダウンロード”する時代へ-味覚メディアが紡ぐ新たな食のフロンティア」 と題して宮下芳明教授(明治大学) にご登壇いただくほか、医療分野における生成AIの可能性 について日本マイクロソフト社の大山訓弘様にご講演いただく予定です。
さらに、特別企画 として、「七本指のピアニスト」 として国内外で活躍される西川悟平氏をお招きいたします。人口減少・少子化やインフレ、自然災害の多発、世界的には国家・民族間の対立が深刻化するなど、先の見えにくい時代を迎える中、西川氏の演奏と驚くような体験談を通じて、人の幸福とは何か、そして Diversity & Inclusion の意味について体感し、考える貴重な機会となることを願っています。
なお、全員懇親会も、学術交流を深める場として趣向を加え、実りある総会となるよう鋭意準備を進めております。ぜひ多くの皆さまにご参加いただき、充実した学術総会となりますよう、ご協力を賜りますと幸いです。
日本内分泌学会99年の歴史の中で、初の千葉県内での開催となります。幕張メッセにて、皆さまとお会いできることを心より楽しみにしております。