会長挨拶

第78回 日本食道学会学術集会
会長 渡邊 雅之
(がん研有明病院消化器外科)

この度、第78回日本食道学会学術集会を2024年7月4日(木)、5日(金)の2日間、ステーションコンファレンス東京にて開催させていただくことになりました、がん研有明病院消化器外科の渡邊雅之です。

食道疾患の診断・治療は大きな変革期を迎えています。

診断においては、AIをはじめとする新規技術が開発・導入され、診断能や正診率の向上が期待されています。食道良性疾患の分野においては、その病態がより正確に把握できる時代となり、また内視鏡を中心とした治療技術の向上により、外科的治療から内科的治療へのシフトも起こりつつあります。食道癌の領域では、これまでわが国での食道癌の主な組織型であった扁平上皮癌に加えて、Barrett食道腺癌・食道胃接合部癌が増加傾向にあり、その治療戦略の確立が求められています。一方、高齢化の進行とともに標準治療が困難な食道癌症例も増加しつつあります。

表在型食道癌に対しては内視鏡治療や化学放射線療法による非手術的な治療が広く行われるようになる一方、局所進行食道癌に対しては術前DCF療法が標準治療となり、より強力な集学的治療が行われるようになりました。外科手術は体腔鏡やロボット支援を用いた低侵襲手術が主流となりました。また、免疫チェックポイント阻害剤が食道癌治療にも有用であることが明らかとなり、切除不能進行・再発食道癌の治療成績向上に寄与するとともに、補助療法としての意義も注目されています。またゲノム解析技術の進歩により、食道癌に対しても新たな治療標的の同定が期待されています。集学的治療の進歩に伴い、食道癌の長期成績が向上すると、これまで治癒がゴールであった食道癌治療においても、治療後のQOLの向上や食道癌サバイバーに対するケアも重要な課題となりつつあります。

新たな技術の開発や導入の背景には、多くの先人たちが築き上げてきた食道疾患診断・治療の膨大な知識や技術の蓄積があり、最新の診断・治療はその上に成り立っているものと考えます。過去の食道疾患診断・治療の進歩の歴史を学びながら、大きな変革期においてわれわれは何を未来に伝えていくべきなのか、新しい技術が食道疾患の診断・治療にどのような未来をもたらすのか、ということを議論できる学会を目指したいと考え、メインテーマをParadigm shift~過去に学び、未来を拓くとさせていただきました。

ご参加いただく会員の先生方にご満足いただけるように、プログラム構成、各種企画等を準備して参ります。是非とも多くの演題をご登録いただき、face-to-faceでご討論いただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。