第64回日本糖尿病学会年次学術集会  第64回日本糖尿病学会年次学術集会

会長挨拶

第64回日本糖尿病学会年次学術集会
会長 戸邉 一之
(富山大学医学部 第一内科)

第64回日本糖尿病学会年次学術集会は,オンラインLive配信にて2021年5月20日(木)から5月22日(土)までの3日間,オンデマンドにて下記の期間開催させて頂くにあたり,御挨拶をさせて頂きます.コロナ感染拡大のためWeb開催ではありますが,Web開催の利点を生かし,全国の学会員の皆さまがZoomで参加できる学術集会を企画しております.

Live 配信期間

5月20日(木)~22日(土)

オンデマンド配信期間(予定)

教育講演:5月20日(木)~6月21日(月)
一般演題(ポスター):5月20日(木)~5月27日(木)
主題プログラム:6月7日(月)~6月21日(月)
一般演題(口演):6月7日(月)~6月14日(月)

富山大学の担当は,故小林正教授が2003年に開催された第46回大会以来18年ぶりとなります.この間,サイエンスの進歩は目覚ましく,糖尿病の病態解明は著しく進み新たな薬剤や機器の開発,治療指導方法の進歩など様々な面で発展して参りました.

糖尿病学の発展には,一人一人の日常診療や研究における「気付き」が重要であると考え,今大会のメインテーマを「日々の診療での気付きから新しい糖尿病学を切り拓く」とさせて頂きました.私自身を振り返り,若い時に実際に患者を診療して悩んだり,夜遅くまでベンチで実験し苦闘した経験があるからこそ,その後ライフワークと思えるテーマに出逢い,現在の自分があるのではないかと考えています.1人ひとりの
「気付き」は最初は小さく思えるかもしれませんが,それが普遍的なものであれば,少しずつ輪が広がり,大きなうねりとなり新しい時代を作っていくのではないかと思います.会員の一人一人の日々の工夫を明日の糖尿病学につなげたいと願い,様々な公募企画とともに,ディベートやTalkセッションを設けました.会員の皆様の智恵をおかりして,次世代の糖尿病学の発展につながれば幸いです.

くしくも2021年は「インスリン発見から100年」という記念すべき年にあたります.これまでの世界及び我が国の糖尿病の発展の歴史を振り返り,新たな次の100年に向け,現在及び将来の課題に向き合うよい機会であります.堀田饒先生と清野裕先生には,インスリン発見にまつわる様々なエピソードとともに糖尿病学の黎明期から今日の発展にいたるまでの歴史や,インスリン分泌及びインクレチン研究100年の歴史を振り返って頂きます.春日雅人先生と河盛隆造先生には,インスリンがインスリン受容体に結合しチロシンキナーゼが活性化する様子をグラフィックにとらえる構造生物学的なアプローチ,インスリン作用についての最新の考え方,β細胞再生医療に関するシンポジウムを御企画頂きました.また,現在の我が国の糖尿病の発展に大きな貢献のあった5名の先生方に御講演を頂く「日本の糖尿病学の発展の歴史とこれからの課題を考えるシンポジウム」を企画しております.

特別講演のC. Ronald Kahn先生,門脇孝先生,記念企画の堀田饒先生,清野裕先生と春日雅人先生には「糖尿病とともに歩む人生」ということでインスリン発見から100年記念インタビューを行っております.
皆様,ご自身が一人一人過去を振り返り,これから進む方向を考えるきっかけにして頂ければ幸いです.

日本糖尿病学会は,そのサイエンスのレベルにおいて,世界でも高い評価を得てきております.特別講演1,2では,これまでインスリンシグナルや2型糖尿病におけるインスリン抵抗性の分子機構の解明,遺伝素因の解明の面で世界をリードしてきたJoslin糖尿病センターの最高学術責任者であるC. Ronald Kahn先生,虎の門病院病院長の門脇孝先生に御講演を頂きます.また,世界的に有名な糖尿病代謝系の学術雑誌Cell MetabolismのDeputy EditorであるRandy Scott Levinson氏を迎え,会員から公募で提出して頂いた演題に対して御意見を頂くセッションを設けております.また,「研究者のサークルを作ろう」という企画においては,女性研究者,基礎研究者,臨床の若手や女性の研究者のセッションを設け,明日の糖尿病学を切り拓く重要な機会にしたいと思います.特別講演3は,ロボット工学専門家である石黒浩大阪大学栄誉教授です.糖尿病学の分野はテクノロジーの進歩が著しい分野ですが,もう一度糖尿病患者との心理的・社会
的な側面に注目して技術・テクノロジーの問題を考えていきましょう.

公募企画1「病院全体の糖尿病力を上げる」では,病院における糖尿病診療を考える公募企画を用意しました.糖尿病患者の教育入院には,診療報酬や看護重症度の観点から,病院執行部から理解が得られにくくなりつつあります.また,血糖コントロールについても病院全体に浸透させるのは至難の業です.このような問題に皆様がどのように取り組んでおられるか,会員の皆様に御意見を伺う企画です.座長には,門脇先生,植木浩二郎先生(理事長),戸邉らを予定しております.また,コロナ禍の糖尿病診療についても公募で皆様に御意見を伺うとともに専門家による最新の情報を講演頂くシンポジウムも予定しております.

近年,2型糖尿病に対する多種多様な薬剤が上市され,その選択に迷うケースが増えてまいりました.この状況に鑑み,「次に選択する薬剤は何か?」というディベートを加来浩平先生と田嶼尚子先生に御企画頂きました.実際の症例(4症例)をもとに専門家にディベートを行って頂き,投票により会員の御意見を伺う場です.積極的な御参加をお待ちしております.

コメディカルと医師がともに参加できるセッションを設けました.CDEJシンポジウムとともにチームで取り組む「高度肥満症例内科的治療vs外科的治療」「サルコペニアかつ腎症を合併した糖尿病:サルコペニアの治療を優先vs腎症の治療を優先」のディベートです.医師,コメディカルが対等の立場で議論できる場でもあります.また,Talkセッション(リス☆カンや日本糖尿病医療学学会との合同企画)(オンラインでのスモールグループディスカッション)を予定しております.その他,食事療法,運動療法,高齢者糖尿病のセッション,妊娠糖尿病1型ライフステージのセッションなど,チーム医療のあり方について御意見を交換して下さい.すぐれた質問をされた方には,「Chatで質問賞」と設け,大会会長から授与する予定です.

オンラインでありますが,オンラインでもスモールグループディスカッションが可能であります.全国どこからでも参加できること,会場内の物理的な移動がなく,Web…上の切り換えで他の会場の企画に参加できる点,議論もしっかりできること,スライドが大きく見えるなどの利点があります.コロナが収束に向かい集会型の学会が開催できる日のために,力を蓄える学会になるよう,皆様の積極的な参加をお待ちしております.