第124回日本小児科学会学術集会 第124回日本小児科学会学術集会

会頭挨拶

第124回日本小児科学会学術集会 ご挨拶

    小児科学は、子どもの体や心のしくみとその異常を、子どもを取り巻く環境も含めて全人的に研究する学問であり、小児医療はその応用により、子どものみならず、その一生と家族や環境にも思いを馳せ、人と社会に働きかけていく医療です。小児科学・小児医療においては、健康な子どもたちの疾病を予防し、その健康を守り、心身ともに健やかに育てていくことはもちろんですが、病気や障害をもった子どもたちに真摯に向き合い、難病の病態を解明すべく、基礎医学研究を行い、その結果を診断や多診療科・多職種による集学的治療に応用すること、また家族・教育者・行政など社会全体を巻き込んだトータルケアを実践すること、そしてそれらを地域づくり・町づくりにも応用していくことも、我々小児科医および子どもに関与する職種の大きな役割です。その意味で、小児科学・小児医療は、やがて成人し、高齢者となっていく子どもとその未来を見据えた、全ての人々のための医療・保健・教育・福祉、そしてより良い社会づくりの出発点と言っても過言ではないでしょう。

2021年(令和3年)第124回の本学術集会のテーマは、「Children First 子どもから創めよう新時代」としました。「来るべき新時代に、子どもの医療や教育のあり方を通して、社会のあり方を考えることは、将来のすべての医療やより良い会づくりにつながる」との念いを込めています。

基調講演には、日本ドラッカー学会理事長の阪井和男明治大学教授、招請講演には米国小児研究学会(Society for Pediatric Research ; SPR)および米国小児科学会(American Academy of Pediatrics ; AAP)のPresidentら米国から4名の先生方、特別講演にはノンフィクション作家で小児外科・小児科医の松永正訓先生と九州大学名誉教授で精神科医、精神分析家、作詞家の北山修先生にご講演いただきます。また、全国プログラム委員や本学会各種委員会等からいただいたアイデアをもとに、国際シンポジウムを含む7つの総合シンポジウム、13の分野別シンポジウム、9の特別企画を企画しました。うち、4企画は新型コロナ関連シンポジウムです。また、小児科専門医に係る教育講演を12本、モーニング実践講座を8本用意しました。一般口演は例年並みの425演題を採用し、会場での発表に加え、ライブ配信ならびに音声入りデータのオンデマンド視聴が出来るよう準備しています。252演題採用したポスターも現地発表に加え、音声入りデータをオンデマンド配信する完全ハイブリッド学術集会を企画しました。

本学術集会が、新興感染症のパンデミックという全世界的な困難に対して「今、いかに対処するか」に留まらず、その収束後も見据えた新時代に、変化するであろう小児科学や小児医療のあるべき姿、より良い社会づくりにおける小児科医の役割など、「未来」について語り合い、さらに次世代小児科医の育成にもつながる場となれば幸いです。

「冬来たりなば、春遠からじ」

春の京都で皆様とお会いできることを心より願っております。

第124回日本小児科学会学術集会
会頭 細井 創
(同志社女子大学 特任教授/京都府立医科大学 名誉教授・特任教授)

第124回日本小児科学会学術集会 ご挨拶

この度、「第124回日本小児科学会学術集会」を2021年4月16日(金)~18日(日)の3日間、国立京都国際会館で開催させていただくことになりました。当教室では、1948年終戦後混乱期のなか斎藤二郎第3代教授が第51回日本小児科学会総会を、その59年後の2007年には先代の杉本徹第7代教授が第110回学術集会を開催されました。後者では私も教室スタッフの一員として貴重な経験をさせていただきました。そのわずか14年後、自らが会頭して主催させていただくことになるとは、正直のところ、お話をいただくまで考えてもおりませんでした。巡り合わせとは言え、このような歴史と伝統ある学術集会を主催させていただくことは教室としてもこの上ない光栄と関係者各位、会員の皆様、また教室の諸先輩方、教室員に感謝しております。

学術集会のテーマは「Children First 子どもから創めよう新時代」といたしました。チルドレン・ファースト、それは単に「子どもはとにかく最優先」と言う意味ではなく、「子どもの医療や教育のあり方を通して、医療や社会のあり方を考えていくことこそが、将来のすべての医療やよりよい社会づくりにつながる」というメッセージを込めています。小児科学は、子どもの体や心のしくみとその異常を、子どもを取り巻く環境も含めて、全人的に研究する学問であり、小児医療は、その応用により、子どものみならず、人の一生を見つめ、人と社会に働きかけていく医療であります。我々、 小児科医をはじめ、小児医学・医療・保健に関係する全ての職種の使命は、健康な子どもたちの疾病を予防し、その健康を守り、心身ともに健やかに育てていくことであることは言うまでもありません。一方で、病気や障がいをもった子どもたちに真摯に向き合い、難病の病態を解明する基礎医学研究、その結果を応用した診断や多診療科・多職種による集学的治療を推進していくこと、そして家族・教育者・行政など社会全体を巻き込んだトータルケアによって、より良い地域づくり・町づくり・国づくりに貢献していくことも、我々の使命であります。その意味で、小児科学・小児医療は、やがて成人し、高齢者となっていくすべての人々のための、明るい未来づくりの出発点と言っても過言ではないと思います。

全世界の人々が未曽有の困難を克服した新時代の幕開けに、子どもの医療・研究・教育・行政のエキスパートらが交流する場として、また若手小児科医がリクルートされ、育成される場として、本学術集会が少しでもお役に立てば幸いです。

春の京都でお待ちしております。

第124回日本小児科学会学術集会
会頭 細井 創
(同志社女子大学 特任教授/京都府立医科大学 名誉教授・特任教授)